世界史が変わる「米・イラン核合意」ー安保に揺れる日本には吉報か?

 

捨てられるイスラエル

アメリカは、「資源利権を確保するため」に中東を重視してきました。ところが、自国に石油ガスがたっぷりあるので、「もう中東のことはどうでもいいや」となった。そうなると困るのが、イスラエルです。

まわりをイスラム国家群に囲まれた「ユダヤ教国家」イスラエル。アメリカに捨てられる可能性が強まっています。というか既に、アメリカとイスラエル関係は、悪化しつづけている。

たとえばこちら。

イスラエル首相、米議会で外交政策を批判 確執深まる 朝日新聞デジタル 3月4日(水)10時53分配信

 

訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相は3日、米上下両院合同会議で演説し、イランの核開発をめぐって米国など主要6カ国が合意を目指していることについて「非常に悪い取引だ」と批判した。

 

外国首脳が米議会で米国の外交政策にノーを突きつけるのは異例で、米イスラエル間の確執が深まっている。

安倍総理の「希望の同盟演説」とはえらい違いですね。

もう1国、アメリカと仲が悪くなっているのがサウジアラビア

「資源確保のために大事な中東」という前提が崩れた。それで、アメリカにとってサウジの重要性は、下がっているのです。

アメリカに見捨てられるイスラエルやサウジは、ロシアや中国に接近することで、危機を乗り切ろうとすることでしょう。

アメリカ、強まる「アジアシフト」

オバマが「アジアシフト宣言」をしたのは2011年11月でした。そしてアメリカは今、「中東最大の敵」イランと和解した。これを戦略的に見ると、「中東戦線から離脱する」ということでしょう。

アメリカは今まで、大きく3つの地域で戦っていました(もちろん、米軍が直接戦っているという意味ではありません)。

1つは、もちろん中東です。

アフガン、イラクとは実際に戦争した。

「イスラム国」を空爆した。

シリア、イランとは、「戦争一歩手前」までいった。

2つ目は、「ウクライナ」です。

傀儡ウクライナ政府を使って、ロシアと戦っている。

3つ目は、アジアです。

たとえば、「南シナ海埋め立て問題」。ここでは、中国と戦っている。

しかし、シェール革命で中東の重要度が下がった。

残りは、ロシアと中国

2014年3月のクリミア併合後、アメリカ最大の敵は、もちろんロシアでした。

ところが、2015年3月の「AIIB事件」で流れが変わった。イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などが、アメリカを裏切って中国主導の「AIIB」に参加した。

これで中国の影響力の大きさを自覚したアメリカは、中国を「最大の敵」と定めたのです。

アメリカは今後、中東戦線、ウクライナ戦線で力を抜き、中国との戦いに集中していくものと思われます。

米―イ和解は、なぜ日本にとって「吉報」なのか?

アメリカとイランの和解は、日本とってとてもめでたいできごとです。

今、日本最大の話題は、「安保関連法案」でしょう。反対派の主張は主に、「アメリカの戦争に巻き込まれる!」です。

で、「アメリカの戦争に巻き込まれる」とは、具体的には「中東戦争」を想定しているのでしょう?

なぜかというと、「北朝鮮」「中国」などとの戦争は、「巻き込まれる」のではなく、「日本自身の戦争」だからです。

「集団的自衛権行使容認」「安保関連法案支持」の私自身、「中東に自衛隊が派遣させられる危険性」については、「そのとおりだ」と思っています。

そして、アメリカがはじめそうな「中東戦争」、ナンバー1は、「イランとの戦争」だったのです。

日本とイランの関係はこれまでとても良好で、これをぶち壊すことは、日本の国益を大いに損ねるものでした。

ところが、今回の和解で、「アメリカ―イラン戦争の可能性」がほとんどなくなった。

これは、「安保関連法案反対派」の主張を弱める結果になります。

image by: Shutterstock

『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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