現時点で見えた「トランプ政権」の輪郭を、しっかり分析していく

 

▼政策の関連だが、オバマケア廃止」という強硬姿勢は修正するようだ。もっとも、トランプは選挙戦の初期から「オバマケアは不十分」だとして、「日本やカナダのような皆保険」を主張していたし、ある時には「サンダース派へのラブコール」という人脈で似たようなことを言っているので、驚くには足りない。だが、共和党の主流派の方で「廃止論」を今でも言っている勢力があるので、調整には色々なジグザグがありそう。

▼「同性婚は支持するが中絶の合憲判例への変更は支持というあたりは、選挙戦での言説どおり。但し、後者は民主党系の世論が受け入れるとは思えず、国論二分の大変な事態になるかもしれない。

▼ということは、年内の「レイムダック議会」で、オバマの推した最高裁判事候補ガーランド判事の承認はないだろう。もっと保守派の人物にスイッチして、1月の新議会でという流れになりそうだ。

不法移民摘発は犯罪歴のある人だけメキシコの壁はフェンスのみとの発言も出た。犯罪歴のある不法移民については、今のところ300万人を強制送還と言っているが、物理的に無理なので更にトーンダウンするのではないか。

▼ただし、TPPについては、極めて具体的に反対してきたので、分からない。NAFTA(北米自由貿易協定)は完全には潰せないので、象徴的な意味でTPPへの反対は続けるのではないか。名前を変えるとか、再交渉というような「生ぬるい」対応でも難しいように思われる。

▼そんな中、14日(月)の午後。オバマ大統領が記者会見をして、「トランプ次期大統領は自分に対して、NATOにはしっかり関与すると明言した」として、「私はその旨を欧州の各首脳に伝える」と言明。この「慌てて欧州首脳に伝えて既成事実化しよう」という拙速さに見られる「狼狽すれすれのニュアンス」はちょっと気に入らない。

▼気になるのは対ロシア外交だ。14日の月曜日には、トランプが当選後初の電話会談をプーチンとやったそうだが、現時点では詳細は不明。大変に気になるところだ。

▼とにかく、国際紛争全般におけるアメリカの抑止力が消滅した場合、ロシアがアメリカや西側諸国の結束を「試す」動きをしてくると、世界の不透明感が増す。そのテストは、まずシリアだろう。アレッポ、ラッカ(?)の戦闘にロシアがどう出てくるか、そしてトランプ政権がどう振る舞うかは極めて重要。

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