またもロシアに翻弄されるのか。北方領土が日本に一番近づいた日

 

エリツィン氏との懇談で驚きの発言を聞く

それは、ゴルバチョフ大統領の後に大統領に就任するエリツィン氏。私は、実は90年の1月に当時まだソ連の最高会議議員(国会議員)で、次期大統領候補と言われていたエリツィン氏と日本で会っている。私と2名の学者とで2回会い、6時間ほど懇談した。

その際、エリツィン氏から「ソ連の経済をよくするにはどうしたらよいか? 日本の本を十数冊読んできた。日本は元々官僚国家といわれ、ソ連と似ている。そうだとすると、どうやって経済成長していったのか?」ということを知りたいとのことだった。

エリツィン氏はその際、「日本は民営化や規制緩和を行なったが、何%くらいの規制緩和を行なえば日本のようになるのか」といった質問をし、非常に硬直化した考えで、当初私は何をいっているか理解ができなかったが、徐々に質問の意図がわかったので「経済成長はそういうことではないということを説明した

エリツィン氏の北方領土返還論

その時に我々の関心事である北方領土に関してどう思っているのかを訪ねると、5段階の返還論があり、これを海部首相にも話すと以下のことを述べた。

  • 第1段階:北方領土の問題の存在を認める
  • 第2段階:北方領土を「自由貿易産業地帯」とする
  • 第3段階:北方領土を「非軍事地域」とする
    当時この地域はソ連に属しているというより軍に属していたため非軍事化し、両国の経済発展の地区とする
  • 第4段階:「日ソ平和条約」の締結
  • 第5段階:最後に「北方領土返還」について話し合う

これを聞いた当時、大統領ではなかったエリツィン氏は返還などの権力はなかったが、翌91年にソ連が崩壊し、ロシア連邦初代大統領となった。このことにより、現実味を帯びてきたことに私は非常に驚いた。そして、この5段階返還論は、本当に現実のものとなるのではないかという期待論も出てきた。

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