お酒の飲みすぎでお腹を下す?「アルコールと下痢」の関係は

2017.11.16
by gyouza(まぐまぐ編集部)
腹痛
 

お酒を飲みすぎて、頭痛や吐き気などの症状が現われる方は多いと思います。

また、下痢などの症状が出た、という方もいるのではないでしょうか。

今回は、お酒を飲みすぎてお腹を下してしまう理由や下痢についてご説明します。

お酒を飲む機会が増える年末年始に備え、体調を壊さないよう参考にしてみてください。

「下痢」という症状

私たちが食べたものは、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸などさまざまな消化管を通って消化・吸収され、エネルギーや身体に必要な物質として全身に運ばれています。

そして、その過程で消化されずに残ったものは便として体外へと排出されています。

このとき排出される便には水分も含まれていて、健康な人であれば水分の割合は70~80%といわれています。

ところが、何らかの原因により便の水分量が増え、便が泥状や水様になってしまうことがあります。

この泥状や水様になった便のことを「下痢」といいます。

下痢の種類

下痢は、水分量が増加する原因によって大きく次の4つにわけられます。

浸透圧性下痢

腸の外から水分を取り込もうとする性質(浸透圧)が高い食べ物(砂糖や塩分が多いものなど)や、下剤などが腸管内にたまると、腸内に多くの水分が残り下痢をすることがあります。

これを「浸透圧性下痢」といいます。

滲出性(しんしゅつせい)下痢

細菌性腸炎やウイルス性腸炎などで腸内に炎症があると、炎症している部分から細胞内の体液や血液が腸内ににじみ出し、水分量が増えることがあります。

これが原因で起こる下痢を「滲出性下痢」といいます。

分泌性下痢

コレラ菌や赤痢菌などが原因で、消化管の粘膜からの分泌液が増えてしまうことがあります。

その結果、腸内の水分量が増えて「分泌性下痢」を引き起こします。

腸管運動異常

腸では、口から摂取したものを肛門に運ぶために蠕動運動(ぜんどううんどう)が行われています。

過敏性腸症候群などが原因で、この蠕動運動が活発になりすぎることがあります。

過敏性腸症候群とは、ストレスなどに起因して消化管の運動機能に異常をきたす症状で、下痢をくりかえす「下痢型」、便秘をくりかえす「便秘型」、下痢と便秘の両方をくりかえす「混合型」、そしていずれのタイプにも属さない「分類不能型」に分けられます。

なかでも下痢型は、ストレスで腸の機能が必要以上に高まり、蠕動運動が活発になりすぎていると考えられます。

蠕動運動が活発化しすぎると、腸の内容物は腸内を速いスピードで通過することになります。

そうすると、腸内で水分が十分に吸収されないまま便として排出されるため、下痢になることがあります。

このように、ひとくちに「下痢」といっても、いくつかのタイプにわけられます。

それでは、お酒の飲みすぎによる下痢はどれに当てはまるのでしょうか?

お酒の飲みすぎが下痢の原因となる理由

「アルコールは肝臓で分解される」、ということは多くの方がご存知でしょう。

口から摂取したお酒は、ほかの食べ物と同じように、まずは胃や小腸などで吸収されます。

なかでも小腸は約80%ものお酒を吸収しています。

お酒を飲みすぎると、小腸の粘膜にある酵素の働きが弱まって、糖や脂肪、水分、ナトリウムなどが吸収されにくくなり、浸透圧性の下痢になることがあります。

さらに、小腸で消化、吸収されなかったものが大腸に流入し、排出物が増えます。

そうすると、未消化・未吸収物を早く排出しようと、大腸の蠕動運動が活発になり、通過するスピードが速くなります。

その結果、水分の多い状態で便が排出され、お腹を下してしまいます。

ちなみに、飲酒による下痢の頻度は、30~60%といわれており、決して珍しい症状ではありません。

お酒の飲みすぎによる下痢を防ぐ方法

過度な飲酒がもたらす下痢にもっとも有効な予防法は、お酒を飲む量を控えることです。

飲酒後の下痢が多いという人は、ご自身の適量を超えている可能性がありますので、飲酒量を見直してみましょう。

また、脂質や糖質が多い食べ物は、消化や吸収に影響を及ぼし、下痢の原因になります。

おつまみには、脂っこくなく消化のしやすいメニューを選んで予防しましょう。

このように、一般的にお酒の飲みすぎによる下痢には、痛みが少ない、お酒を控えると症状が改善する、といった特徴がみられます。

ですから、下痢以外に症状がある、お酒をやめても症状が治まらない、という場合は、ほかに原因があるかもしれません。

早めに病院を受診するようにしてください。

【参考】
・アルコール関連問題予防研究会「PREVENTION No.208 消化管とアルコール~口から肛門まで~」(http://al-yobouken.com/pdf/H21/PREVENTION_NO208.pdf)
・日本臨床内科医会「わかりやすい病気のはなしシリーズ42:ただしい下痢の対処法」(http://www.japha.jp/doc/byoki/042.pdf)
・コトバンク 家庭の医学館「感染性腸炎」(https://kotobank.jp/word/%E6%84%9F%E6%9F%93%E6%80%A7%E8%85%B8%E7%82%8E-793454)

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

医療監修:株式会社とらうべ

 

<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

image by: Shutterstock

 

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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