外国人労働者50万人の受け入れを決めた日本に起こる、6つの変化

 

移民問題が起こるプロセス

世界で起こっている移民問題を知ると、「どこでも人間は変わらないものだ」と考え込んでしまいます。私の住むモスクワを例に問題が進行していくプロセスを考えてみましょう。

まず、ソ連時代。私がゴルバチョフにあこがれてモスクワに来たのは、ソ連崩壊前の1990年。当時、物不足はひどかったですが、治安は悪くありませんでした。また、民族差別も深刻ではありませんでした。

ソ連崩壊後状況は変わります。92年は年2,600%のハイパーインフレ。ロシア国民は貧困に突き落とされた。状況が「第1次大戦後のドイツに似ている」ということで、「ロシアにファシズムが現れるのではないか」と世界が心配していました。事実、93年の議会選挙では「東京に原爆を落とす」発言で知られる、極右ジリノフスキーの「ロシア自民党」が第1党になっています。この当時から、民族差別が深刻化していくのですが、今の日本とは状況比較になりませんので、先に進みます。

連邦崩壊で、ソ連は15の独立国家になりました。しかし、その後明暗が分かれます。石油生産世界2位・天然ガス世界1位のロシアは、原油価格の上昇と共に、経済が急成長していきます。プーチンが大統領になってから7年間、年平均6~7%の成長を続けている。それで、ロシア比で生活が苦しい中央アジア・コーカサス・ウクライナ・モルドバから、大量の移民が入ってくることになったのです。

私が普段見かける光景をお話します。道の清掃や雪かきをしているのは、全部ウズベキスタンなど中央アジアの人たちです。モスクワでは建設ラッシュが続いていますが、現場の光景は、やはり同じです。また、青空市場に行くと、中央アジア、コーカサス、ウクライナ、モルドバ人が売っていて、ロシア人は見かけません。連邦崩壊後に旧ソ連からモスクワ来た人たちは、おそらく90%以上がロシア人の嫌う仕事をしているはずです。

実をいうと、これが移民問題と差別の原因になるのです。

「少子化で労働力が不足するから」と移民推進派は主張します。本当でしょうか? 例えばフランスはカトリックの国ですが、移民のイスラム教徒が人口の7%を占めています。ところが、この国の失業率は9%が普通。もしイスラム系移民がいなければ、失業率はずっと低かったでしょう。

ちなみに日本の失業率は4%。まず日本人の完全雇用を実現してから移民受入れを検討していただきたい(北野註:08年は失業率4%でしたが、今は2.5%まで下がり、人手不足が深刻化しています)。

ところで、フランスはなぜ移民を入れたのでしょうか? 要するに、フランス人が嫌がる分野の労働力が不足したから。

「フランス人が嫌がる仕事は、旧植民地の連中にさせればいいさ!」

どうでしょう。私が「移民に反対するのは、外国人を差別しているからではない」という意味、ご理解いただけるでしょう。逆に、移民を推進する人の方に差別意識がある。なぜなら「労働力が不足する分野」というのは、「自国民が働きたがらない分野」に決まっているからです。

日本でもおおっぴらには言いませんが、「日本人が嫌がる仕事は、貧乏な中国人や東南アジア人にさせればいいや」という意識があるのでしょう。(まあ、「そのとおり!と公言する人もいないでしょうが…)。

フランスの黒人が差別を感じ、イスラム系移民が暴動を起こす。これは、彼らの大部分が尊敬されるポジションを確保できていないことを示しています(サッカーのジダンなどは例外)。

さて、ロシアに話を戻します。モスクワ市民も大半は、移民に差別心を持っていません。しかし、何%かは差別意識を持っているようです。旧ソ連諸国の移民に、奴隷のように接する金持ちもいます。また、「移民のせいで俺らは仕事がなく貧しい」と八つ当たりする人もいます。すると、かならず民族主義集団が登場してくるのです。

ドイツのネオナチのような集まりがどこの国にも出てきます。モスクワにも、スキンヘッド集団がいて、一時期外国人を殺しまくっていました。ここ数年は、サンクト・ペテルブルグで外国人殺しが流行っています。

するとどうなるか?

移民も一体化し防衛策をとるようになる。そして、「麻薬・売春・カジノで儲けよう」という移民のゴッドファーザー的男たちが出てきます。モスクワには、グルジア・アゼルバイジャン・アルメニア・チェチェンなどのマフィアがいて、非合法ビジネスで儲けています。

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