【書評】ただただ、下品。自称「グルメ」たちが壊す日本の食文化

 

口コミグルメサイトも凄まじいことになっている。食を語るのに、共通して妙な言葉遣いをする。その典型が「食す」である。著者がグルメぎらいになる一番のきっかけが「食す」であり、「こだわり」であり、「いただく」であった。そして、料理人崇拝主義とでも呼ぶべき、食に対するおかしな風潮がある。

今や外食の最大関心事は食べることより、店や料理に向けられる。店と親しくなって、それを自慢げにブログや口コミサイトに書き込みたい。それだけが目的となっている。そういったほんの一握りのいわゆるグルメによって、今のグルメブームが成立して、多くの口コミサイト、ブログ、そしてSNSで食が語られている。

しかし、殆どが店側の情報を垂れ流している受け売りに過ぎず、まるで店の広報文のようである。官能的な表現を使うのも、自分の文章に酔っている人たちの特徴だ。料理人たちがよく使う言葉である、採算度外視、赤字覚悟、そんなわけがない。料理人は写真写りのよさも考慮して、調理しなければならなくなっている。

本末転倒、料理を食べることより撮ることを優先する。その結果、世の中にインスタ映えする料理ばかりがもてはやされる。今や食のトレンドは静止画を超えて動画にその主役が移りつつある。美味しいものを食べる、という目的を横に置いて、人がうらやましがる写真の撮れる料理を食べる。そんな歪んだグルメが横行している時代になった。つまり、いまのグルメは幼児化しているのだ。

なぜ僕がグルメぎらいになったかと言えば、今の時代にグルメと呼ばれる方たちは、ほぼすべての方が、ほかの店や料理と比較なさるからです。比較せずにほめることができないのでしょうか。点数を付けたり、格付けしたりせずに、ただただ食を純粋に楽しむことはできないのでしょうか。(略)大切な食を、一部のグルメと呼ばれる人たちによって乱されたくないのです。ただただそんな思いでこの本を書きました。

グルメブログやSNSに無関心なわたしの、未知な領域がここにあった。グルメ…おそろしい人!

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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