なぜ国も推進する「副業・兼業」を多くの企業は許可しないのか?

 

E子 「御社の場合、パートさん向けの就業規則が別にあるわけでなく、正社員と同じ規則を使っています。服務規定も全く同じ内容です。正社員でない、パートさんの場合、掛け持ち勤務は問題ないと思っていらっしゃるのかもしれませんね。再度周知をしておきましょう」

T社社長 「そうですね。うちの場合、全員同じ規定ですけど、『社員さんは、副業はダメだけど、パートさんは副業禁止はない』と思っているなら、今後もこういうことはたくさん出てくるかもしれないなぁ。しっかり周知しておかないと…」

E子 「いくつもある規定の中のひとつだと、意識も薄いかもしれません。労働条件通書にも別途記載しておくのが良いですね」

T社社長「はい、そうします」

新米 「ところで、週に数日勤務ならまだしも、今回は『1日7時間、週に5日勤務』の方ですから、でフルタイムに近いですよね」

T社社長 「そうなんです。すでに週に35時間働いているうえでのことなんですよ」

新米 「そのうえ、火、木、土、日曜日に5時間ずつとの許可申請は正直驚きました。休日のみに掛け持ちするとか、1日2時間くらいの話かと…」

T社社長 「そうなんですよね。週に20時間もですよ。これって、どう思いますか?」

E子 「週35時間労働に加えての週20時間の掛け持ち。合計して週に55時間。週40時間制に置き換えても週に15時間の時間外労働。月に置き換えて、60時間以上の時間外労働は、目安とされている月に45時間よりも多いですね。もちろん年間360時間を平均した30時間もはるかに超えてしまいます。健康上良くないのは当然ですし、会社の安全配慮義務上も、過重労働になると、会社が過労死等の発生による損害賠償請求の対象になったり、情報漏洩等のリスクは、フルタイムの従業員でなくても発生する可能性はあり、副業容認は安易に考えない方が良いです」

T社社長 「今回の働き方改革で『副業容認』が法的に決まったのであれば、認めざるを得ないと思っていたのですが、それはどうなんですか? うちは、法的に決まったことは仕方がないから、ある程度は認めないといけないのかと思っていました」

E子 「あ、副業容認が義務化になったわけではないですよ。あくまで推進のレベルです。だから、認めないといけないということではないです。前にもご紹介しましたが、サイボウズさんのようにすでに『社員に対しても副業を持つように』と言っている会社さんもあります。現時点では、会社がどう考えるかは自由です。つまりは、社長がどうされたいかですね」

T社社長 「国は、時間外労働を減らせって言っているでしょう。時間外労働が減ってくると、こんな風にしわ寄せが来るケースも増えてくると思うんだよねー。なんかこう、国のやっていることは、逆行しているというか裏目に出るように思うよ」

新米 「確かに大幅に時間外労働を減らすことになると、時間外労働手当が生活給になっている場合は、奥さんがパートに出たり、フルタイムになったり、いろんな動きが考えられますね」

T社社長 「この人の場合は、数年前にもご主人が転職して給与が減ったとかで所定労働時間を6時間から7時間にして、時給もかなりアップしてあげたんだけど、それでも子供さんが大きくなって、学費などでおっつかなくなってきたんだろうな…」

新米 「国は、『ワークライフバランス』っていってるけど、会社がその分給料をあげてあげることも難しい。生活給が減ると大問題になってくる人もあるでしょうね」

T社社長 「理由が理由だから、認めてあげたいのは山々だけど、安易に前例をつくってしまうと、あとから問題になることも出てきそうだよ」

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