なぜ国も推進する「副業・兼業」を多くの企業は許可しないのか?

 

E子 「確かにそうですね。では、副業・兼業のメリット・デメリットをあげておきますね。会社側のデメリットとしては、

  • 自社での業務がおろそかになる
  • 情報漏洩のリスクがある
  • 競業・利益相反になる
  • 長時間労働・過重労働により健康を損なう事につながる
  • 労働災害発生時の本業との責任区分が困難になる
    (特に、長時間労働・過労による脳・心疾患・精神疾患発症時)
  • 副業・兼業先の勤務時間の把握が困難で過重労働の有無等の労務管理ができない
  • 人材流出につながる
  • 会社の社会的信用を落とす

会社側のメリットとしては、

  • (人材を受入れる場合)優秀な人材人手を確保できる
  • 社員のスキルアップ人脈の拡大を通した本業への還元
  • 社員に主体性が生じる

労働者側のデメリットは、

  • 長時間労働につながる
  • 本業先、副業先で就労調整する場面が増え居づらくなる(人間関係トラブルが増える)

労働者側のメリットは、

  • 所得の増加
  • スキルアップや経験を得る事で、キャリアを形成できる
  • 自己実現の追及
    →会社にとっては人材流出に繋がる恐れがある

ってところでしょうか」

T社社長 「会社のデメリットは、すんなりとは看過できないねー。人手不足だと、逆に受入れはしたくなるけど。なんか矛盾しているよねー」

新米 「副業・兼業の問題点もおさえておきましょう。労働基準法第38条では、『労働時間は、事業所を異にする場合においても、通算する』と規定されていて、『事業所を異にする場合』とは、事業主を異にする場合も含まれるとされ(労働基準局長通達、昭和23年5月14日基発第769号)ているので、労働時間を会社と副業先で通算しなくてはならないんですよ」

T社社長 「え? そんなことになっているんですか?」

E子 「そうなんですよ。時間外勤務扱いとなるがアルバイト先では、割増賃金が発生するんですが、たぶん労基法違反になってしまっているのでは? と懸念します。また、アルバイトが早朝勤務だと、逆に御社が割増賃金を払うことになります」

T社社長「え ?そんなことになるの?」

新米 「そうです。なので、許可を与える場合は、そこまで理解したうえでの許可をしてくださいね」

T社社長 「そうかー。なかなかやっかいだね」

E子 「他にも、労働契約法第5条(安全配慮義務)では、使用者には、労働者が安全で快適に仕事ができるように配慮する義務があると規定されており、副業・兼業をする事で、労働者が過重労働にならないようにしなければなりません。雇用保険や社会保険の適用についても、どちらで加入するかなど見直しが必要になることがあります。ご注意くださいね」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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