それにしても、情けなかったのは吉田氏の発言に対する石破氏の当初の反応だ。
自民党の石破茂元幹事長は25日、総裁選への立候補を表明した際に掲げた「正直、公正」のキャッチフレーズを変更する可能性に言及した。東京都内で記者団に「別に人を批判するつもりはまったくない。そういうふうにとらえる方がいるなら、変えることだってあるだろう」と語った。
(8月26日、毎日新聞)
他人に何かを言われたからといって簡単にキャッチフレーズを取り下げたら、それこそ、ジ・エンドだ。一気に信用を失うだろう。
吉田氏にしても、言いたくはなかったが、総理周辺に向けて石破氏にクギを刺すポーズを見せ、少しでも自分の気分を落ち着かせたかったのかもしれない。
石破氏はキャッチフレーズの変更を思いとどまったものの、27日の会見で、記者の質問に余計なコメントをしてしまった。「正直、公正は政治姿勢のキャッチフレーズだ。政策論になるとスローガンは当然変わる」。
本人は誠実に説明したつもりだろうが、これでは、下手な言い訳になってしまう。論戦をできる限り避け、イメージ戦略ばかり駆使する安倍陣営の思うツボだ。
では、石破氏の政策は、総裁選に向けて説得力のある内容になっているのだろうか。
石破氏が27日に発表した政策は地方の党員票を意識しているが、それだけにスケールが小型に見える。
たとえば、異次元の金融緩和という「カンフル剤」が効いている間に地方と中小企業の成長を高める「ポストアベノミクス」。これは、成長戦略の失敗を指摘しながらも、カンフル剤としての「アベノミクス」を前提とした政策だ。
官邸で乱立する会議を再編し、「日本創生会議」を新設するというのも、確かに理にかなっているが、しょせん会議を踊らせるだけに終わる安倍路線の焼き直しのような気がしないでもない。
会議やスローガンの乱造、乱打でハッタリをかますばかりの相手に、既視感のある政策で対抗しても、パンチ力に欠ける。
エネルギー政策については、再生可能エネルギーを主力電源とする目標を現行の2050年から大幅に前倒しし、原発の最小化を目指すと言う。大幅に前倒しとは、一体いつのことなのか。
安倍首相が打ち出せない「原発ゼロ」を掲げるくらいの思い切った政策が必要だろう。