「定額時間外手当」を適当に設計すると、会社はこんなに痛い目に

 

大塚 「減給ともいってたけど、それはどういうこと?」

新米 「この従業員さん、23歳から30万円もらっていて、年齢の割にはそこそこ高給で、店舗勤務から本社勤務になったとき、47万円に昇給になったこともあるそうなんです。そこから賃金が下がったことについて、同意はしていないということのようです」

大塚「47万円は高給やね。でも、勝手に減給はできないし…」

新米 「会社側は、『1週おきに従業員全員が出席する査定会議で評価が決まり、賃金が上げ下げされている。懲戒処分がない限り、入社時の賃金総額を下回ることはない。これは、全従業員に説明し、同意を得ていた』としています」

大塚 「47万円が減額されたことから、47万円を割増賃金の基礎賃金として再計算したから、こんな高額の未払賃金になったのね」

新米 「はい、そういうことです。割増賃金の基礎賃金がいくらなのかをしっかり規定するのは、重要なことですね」

大塚 「そうよ。だから、労働条件通知書でこの定額時間外手当が何時間分の割増賃金かを明記することが大事になるのよね」

新米 「付加金は、割増賃金としての実態がないにもかかわらず割増賃金を払っているかのように見せかけ、その支払いを怠っていたことへの制裁として、科されるべきとなったようです」

大塚 「そうかー。悪質と判断されたのね。じゃぁ、損害賠償金は何に対して?」

新米 「社会保険未加入について会社の不法行為に関する損害賠償だそうです。会社は、『社会保険に加入しない旨の説明をしたうえで、労働契約の締結をしているし、社会保険料が控除されていない分手取りも多くなっている。自ら社会保険への加入を求めたこともない』って言ってるんです」

大塚 「損害って、社会保険料分なのか将来の年金額に対してなのか? 何に対するものなのかな? 賠償金額も100万円と、最初からそんなに多くはないよね」

新米 「雇用保険の失業給付や健康保険の給付ができない、年金額の減少といった不安定な状態での就労を余儀なくされ、精神的苦痛を被ったことへの損害を訴えています」

大塚 「それが、10万円認められたってことね。10分の1かぁ…。ちょっと低いわね。これ、弁護士さんでなくて、社労士が絡んでいたら年金額など本来はいくらもらえるはずですって請求できただろうにね。このときは、精神的苦痛に対してのみの請求になってるけど、本当は、実損害金額を計算すると良いわね。社労士も積極的にかかわるべきね」

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