で、最近注目され出したのは、長寿命化による認知症の増加と認知症の方の財産凍結という課題、成年後見制度の限界、不自由さ、相続人が決まらず、放置される空き家問題等社会問題を解決するのに有効な手段だと気づき出したことによります。
90歳代まで長生きするのが珍しくない社会は、認知症発症と長期化する介護のリスクと共存する社会です。親が認知症になると家族はたいへんです。介護を誰が担うか、施設に入居するとして費用を誰が負担するか、兄弟でもめることにもなります。それが遺産相続の争いにもつながります。介護に使える財産を持っているのに、認知症になって、それが動かせなくなり、有効に使えていない高齢者がたくさんいるのです。
それによって、結婚しないで自宅に同居している子供等が介護を抱え込むことになり、介護離職、介護離職の長期化による社会からの孤立というような介護する側の問題にもつながっています。
認知症を発症すると、法律行為(法律的な義務や権利が生じること)ができなくなります。具体的には、下記のことができなくなります。
- 不動産契約の締結(売買、賃貸借)担保提供
- 議決権の行使
- 遺産分割協議書への参加
- 贈与(子供や孫に渡す)
- 保険契約、保険受け取り
- 預金の引き出しの依頼、振り込み、定期預金の解約
これが財産凍結です。認知症によって凍結した財産は200兆円に達します。普通預金にあるお金だと、本人じゃなくてもキャッシュカードで引き出せるから大丈夫、暗証番号知っているし…という方もいると思いますが、振り込め詐欺等の対策で、銀行側のチェックも厳しくなっています。一旦、お金の引き出し方がおかしいと認知されると、キャッシュカードが使えなくなります。その時点で財産凍結です。
長生き社会では、両親、子どもも含め、誰が認知症を発症するか、誰が長く生きるかも、予想がつきません。例えば、典型的な、銀行預金や不動産は父親名義という家族で、母親が認知症を発症していたが、元気で母親のめんどうを見ていた父親の方が急死したような場合、認知症の母親が父親の財産を相続することになりますが、その財産を相続するためには成年後見人をつけなければならず、成年後見人は、法定相続分の2分の1を請求し、(さらに、民法が来年改正になると
自宅は母親が相続することになります)以後、相続財産は有償で法定後見人が管理することになります。父親が子供と相談して考えていた相続税対策もいっさいできなくなります。
改めて、高齢の両親のたどる道にもいろいろなパターンが考えられます。父親が認知症になったら…父親が先に亡くなったら…母親が認知症になったら…母親が先に亡くなったら…、さらに第一受託者とした長男が母より先に亡くなったら…等々。
信託契約書を作るという作業は、将来のあらゆる状況に備えて、自分の気持ちや意思を確認しながら、本人や親族が困らないように組み立てるという作業で、人生の総決算のようなものです。勉強会の講師の方が扱った家族信託77人のケースをパターン分類すると、
第1位 介護費等の捻出、実家売却
第2位 相続税を減らしていくため
第3位 親亡き後の生活支援をするため(障害、引きこもり、浪費、アルコール依存症)
第4位 家督相続型(長男の嫁に渡したくない等)
になるといいます。やはり、介護費用捻出のために自宅が売却できるようにという目的で検討するケースが多いのです。