五輪後5年でおとずれた「ギリシャ危機」、東京2020は大丈夫か?

 

私が滞在中の日曜日、その日は午後から中心部の商店街はシャッターを下ろし始めた。シエスタと思いきや、学生蜂起を記念する大規模なデモが予定されていて、アテネ中心の国会議事堂につながる周辺道路は機動隊のバスが道を封鎖する格好で、一般の警官のほか、催涙弾に備えたマスクを準備する機動隊が配備された。デモ側の最前列はバイク用のヘルメットとこん棒をもった若者たちが隊列を組み、スローガンを唱えながら行進する。

立ち直りつつある現状のギリシャからすれば、衝突するほどの爆発的なエネルギーはないから、デモにそれほど緊張感はない。しかし、ちょっとした小競り合いがヒートアップし流血の事態を招くデモを私は韓国で何度も見てきたから、平和で終わってくれと願う。健全な「街頭民主主義」を全うしてこそ、ギリシャの価値が高まるのだと思いながら。

支援プログラムの終了と財政支出の黒字化は「健全」の第一歩ではある。しかしながら、必ずつけがある。緊縮財政のしわ寄せは地方にまわる、年金が削減され、医療費などが圧縮、教育設備投資の不十分さと産業の衰退と失業、これらの不満がくすぶり、地方の不満が中央政権の存在を揺るがすケースは少なくない。最近では「イスラム国」と自称するISとシリア政府軍の争いは、シリアの中枢であるアサド政権のおひざ元から遠く離れた地方の不満が結びついて混迷化したのだ。

おそらく五輪はギリシャ国民に夢を見させてくれたのだろう。2004年のあの五輪期間中、数年後に国家が経済危機に陥るとは誰もが思ってみなかったはずだ。そこで突然、莫大な財政赤字が国民の前に差し出された。これは現実だ。私たちがそうならないよう、2年後の五輪開催に向けて夢を見ながらも、現実を捉えて、その後の未来をも考えて、五輪と向き合うべきだろう。

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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