日韓「武力衝突危機」の高まりを交渉のプロが強く警戒する理由

 

中東地域のパワーバランスのカギを握るトルコ

あとはBrexit絡みのヨーロッパ情勢でしょうか。今月21日までには国内での合意を取り付け、最終的なアレンジメントについて3月までにEUとの間で合意しないといけないメイ政権ですが、年明けの現在でも、まだ何ら策が見いだせていないようです。EUサイドも、すでに非難をする形で拳を高く上げてしまっていますので、そうそう簡単に妥協もできないというジレンマに陥っています。このまま合意なしのハードBrexitになったら……世界経済への影響は決して小さくはないはずです。

そして中東情勢は、非常に不幸なことながら、さらに今年混迷を極めるでしょう。トランプ大統領がシリアからのアメリカ軍引き上げを発表したことで、ロシアとトルコの影響力が一気に高まり、そして両国を後ろ盾に持つイランと、激しく対決するサウジアラビア、そしてイスラエルという、非常にアンバランスなトライアングルが登場します。イラン、サウジアラビア、イスラエルが直に戦火を交えるような事態には陥らないと思いたいですが、イエメンやシリアなどで行っている“代理戦争”での衝突や、長年の憂慮材料であるイスラエル・パレスチナを巡る“争い”を場にした衝突も、これまで以上に、考えられる事態になってきています。

非常に不気味な動きをしているのが、中東地域のパワーバランスのカギを握るトルコと、中東地域に勢力圏を持ちたいロシアの存在です。特にトルコは、昨年のカショギ氏殺害に絡む諸々のデータを、じわじわとサウジアラビア王室に突きつけることで、国際社会からのサウジアラビアへの批判を高め、最後の一突きをお見舞いできるほどの情報を握っているようですので、トルコが、中東地域の安定に対して握っているカードは、数が多く、非常にパワフルなものになっていると考えられます。

さて、今年はどんな国際情勢を見ることになるのでしょうか。とても楽しみです。2019年が皆様にとって、そして世界にとって、平穏で平和な一年でありますように。

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