GDP以外の中国の経済目標ですが、1,100万人の新たな雇用、消費者物価の振れ幅3%程度、農村貧困人口1,000万人減少などを掲げ、増値税の16%から13%への引き下げ、鉄道建設へ8,000億元、道路や水路に対して1兆8,000億元投資することなどを重点策として掲げています。
ただし、かつて「経済成長8%を死守する」ということで「保八」が叫ばれたことがありましたが、そのときは1,000万~1,500万人の雇用を生み出す必要があり、そのためにはどうしても8%の経済成長が不可欠だということでした。現在、6~6.5%という経済成長率目標で1,100万人の新たな雇用を生み出せるのか、はなはだ疑問です。
一方、軍事費については昨年比7.5%増の1兆1,900万元と、GDP以上の伸び率となっています。ここ数年、中国の経済成長率は下落の一途を辿っていますが、軍事費の伸び率は2016年7.6%、2017年7%、2018年8.1%と、およそ7~8%増を繰り返しています。
中国の軍事費についても不明な点が多く、実際にはもっと額は大きくて毎年2ケタ増だという説もあります。当然ながら、周辺諸国やアメリカの警戒心を煽らないためにも表向きの軍事費としては小さい額のほうがいいわけですが、それでもこれほどの伸び率になってしまうわけです。
軍事費増が必要なのは、中国の覇権主義を加速させるためです。しかも習近平は台湾併呑を掲げており、経済が失速するなかで、台湾併呑こそは「偉大な指導者」として名前を残すためにどうしても成し遂げたいことだからです。経済が失速するからこそ「別の成果」を残さないといけないのです。
とはいえ、中国では軍事費よりも治安維持費のほうが約2割多く、2017年の時点で1兆2,400億元と、2019年の軍事予算をすでに超える規模です。中国の中央一般公共予算は2017年で9.6兆元で、2019年度が約10兆元程度だとしても、防衛費と治安維持費で2兆5,000億元程度とすると、それだけで国家予算の4分の1にも達することになります。
しかも景気対策のための減税を打ち出しているわけですから、中国の財政不足は明らかです。そもそも中国は内外の債務残高がGDPの343%にも達しており、デフォルトを回避するために紙幣を大量に印刷しているものの、それがインフレを招いて経済危機を呼び込むと警告するエコノミストも多くいます。
● 中国の内外債務総規模、対GDP比で約343%=中国メディア