日本の「2025年問題」はすぐそこに迫っている。2025年には団塊の世代が後期高齢者になる。医療費が爆発的に増える。健保連の推計では2025年の日本の医療費は57.8兆円と、2015年から4割近く増加する。その増加分の殆どは後期高齢者の医療費で、高齢者の医療費に限ってみれば、7割近くの増加となる。
当然、医療保険料を値上げしなければやっていけないが、その一方でそれを払い込む現役世代の人口は減少するのだ。日本の医療保険が持続可能な形になっているかは、大いに疑問である。日本の医療関係者は少ない上に負担が大き過ぎる。こんな先進国は日本以外にない。日本のシステムは持続可能かというと、2025年問題の解決策を真剣に考えない限り、おそらく難しいと断言できる。
これ以上、医療関係者にしわ寄せを押し付けることはできない。医療保険の構造改革も必要だが、人々が(とくに高齢者が)考え方を変えることが何より重要なことである。若い人たちの、自らの責任ではない負担が、刻一刻と増え続けている様子を見ながら、高齢者たちだけが「逃げ切ればいい」わけがない。
年金制度の改革を行おうとしたとき、「長年、働いてきた人を斬り捨てるのか」と煽って批判する人たちがいる。制度の改革は、変化した状況に適応させるために行うもので、敬老の精神とは切り離して考えるべきだ。いずれにせよ、日本では、年金にしろ、医療費にしろ、支援が高齢者のところに集中している。
それに比べて、これから働き、子供を作り、しかも、高齢者を支えていかなければならない若い世代が、貧しい。支援すべきは、まずは若者だ。医療保険がこげついている今、医療は治療の効果の出る人を優先すべきだし、また、高齢者は実費の何割といわず、支払い能力に応じて、若い人の分まで負担すべきだ。
そして、同時に、高齢者の不要な医者通いも厳重に制限する。そのためには、無駄な診療や投薬では、医者に儲けが出ないシステムを作ることが必須だろう。「意識もなく寝たきりの人々のおかげで、日本の平均寿命が世界一に押し上げられているのなら、1位は返上しても差し支えないのではないかと私は思っている」。読者である私もそう思っている。ピンピンコロリといきたい。
編集長 柴田忠男
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