それにしても官邸外交ばかりが目立ち、外務省の影が薄いのは気になるところだ。今井秘書官の“経産省ライン”が幅を利かせる現状は、外務省から見れば面白くないだろう。
河野太郎氏は外務大臣就任後、朝鮮半島を担当してきた「北東アジア課」を韓国担当の「1課」と北朝鮮担当の「2課」に分割した。これは官邸の意思だとされる。国交のない北朝鮮を専門とする新しい部署を、外務省内における「官邸の出先機関」と捉える向きもあった。
いまや、外務省は官邸外交のサポート役に成り下がった感さえある。こうなると、第二のミスターXを探しあてて接触するような難しい仕事は避けようとするのも仕方がない。官邸からの横やりが入らないよう、下請けに徹するということになってしまう。
国連本部での拉致問題シンポジウムに拉致担当として出席するという大義名分はあるものの、国の危機管理をあずかる菅官房長官が訪米した真の目的が、金正恩に到達するルートにあったとすれば、国家組織の機能分担がうまく働いているのかどうか、不安をおぼえる。
安倍首相の派手な外遊パフォーマンスの裏側で、地道かつしたたかであるべき外交情報力は脆弱になっている。官邸外交の弊害か、それとも外務省の怠慢なのか。
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