米国のイラン司令官殺害で新年予定を変更した、金正恩の武者震い

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新年ムードを一変させた米国のイラン司令官殺害事件ですが、今回の一報に最も衝撃を受けたのは、イランと同様に「核開発」を巡り米と膠着状態にある、北朝鮮の金正恩委員長だったのかもしれません。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年の日本人著者が、米のイラン司令官殺害報道に対し朝鮮半島のメディアが報じた金正恩の反応や、今後の動向を考察しています。

イランの司令官をドローン攻撃した米、北はどう出るか

年明け早々から世界は物騒な動きとなっている。

北のクリスマスプレゼントは今のところ一旦は寝静まった形となっているけれど、いつまたプレゼント発言があるか予断を許さない状況だ。

そんななか、1月3日未明、トランプ米大統領の命令によってアメリカ軍がイラクの首都バグダッドで、イラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官をドローン攻撃で殺害した。ソレイマニ司令官は、イラン革命防衛隊で対外工作を担う特殊部隊「コッズ部隊」を20年以上率いてきた比類なき軍事指導者だ。イラン国内では最高指導者ハメネイ師に続き、事実上ナンバー2の実力者とみられてきた。イランの国民的英雄である。

アメリカは2007年10月以来、ソレイマニ司令官をテロリストに指定し経済金融制裁を科してきた。トランプ大統領も1月3日、支持基盤のキリスト教福音派向けの集会で「昨夜、私の指示でアメリカ軍は空爆を成功させ、テロリストを殺害した」と述べた。アメリカ国務省高官は、ソレイマニ司令官がイラクだけでこれまで608人のアメリカ人を殺害してきたと主張した。今回のソレイマニ司令官殺害によって、中東における何百人ものアメリカ人の犠牲を未然に防ぐ可能性があったと指摘した。

これには、北の首領様が大ショックをうけたことはまちがいない

トランプ米大統領はつづく4日、「イランが報復攻撃する場合、イランの52か所を攻撃目標地点に定めた」とし追加攻撃を示唆した。さらに米国は兵力3,500人を中東地域に急きょ派遣し、イランの報復攻撃の可能性に素早く備えている。

北朝鮮は5日午後までのところ、表面的には直接的な反応は自制している。しかし「強者の前では卑屈になり、弱者の前では暴悪になることが帝国主義者(米のこと)の行動」(5日、労働新聞)と、間接的にイランの肩を持つ論評を出している。

北朝鮮とイランは、ミサイル技術を交流するなど外交的に関係が深い。ブッシュ大統領のとき、両国を「悪の枢軸(axis of evil)」と位置づけるほど毛嫌いすべき存在だ。李容湖(イ・ヨンホ)北朝鮮外相は、2018年8月、イランを訪問しハサン・ロウハニ大統領と関係の強化策について話し合ったりしている。

韓国政府当局者は5日、「米国はソレイマニの除去を通じて外交的に解決されなければ軍事的オプションを使用するかもしれないと明確に示した」とし、「北朝鮮は直ちに自分たちにも同様の状況が発生し得るかをよく考えてみるべきとき」と語った。

実際、金正恩(キム・ジョンウン)の父親の金正日(キム・ジョンイル)は、2001年10月と2003年3月、米国がアプガニスタンとイラクを攻撃した際、それぞれその後の25日間と50日間、表立った活動を中止した経緯がある。

ソレイマニに対する攻撃の動きは先月27日から感知されていた。金正恩が今年の新年のメッセージをスルーしたのに続き、これまで大々的に宣伝してきた錦繍山(クムスサン)太陽宮殿参拝(通常1月1日)の日程を具体的に公開しなかったのも、身辺保護強化のためのものだという分析も出ている。

正月早々、北の首領様としては思わぬ障害物に遭遇した格好だ。どのようなコメントが出てくるか、世界がまた注目している。

image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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