「ねむの木学園」園長宮城まり子さんの死に寄せて思うこと

宮城まり子
 

肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」園長の宮城まり子さんが3月23日、死去しました。重度障がい者の生涯学習支援の活動を行なう引地達也さんは、高校生のとき、ミスタードーナツ店内にあった絵で「ねむの木学園」の存在を知ったと、自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で振り返ります。引地さんは、障害者に愛を持ち、可能性を信じ芸術や才能を社会に発出した宮城さんに直接会い、言葉をいただきたかったと、思いを綴っています。

「ねむの木学園」の宮城まり子さんへの誘いに時は流れ

静岡県掛川市の障がい者施設「ねむの木」学園を知ったのは、30年以上前の高校生の頃だった。場所は仙台駅前のミスタードーナッツ。友人と好きなミュージシャンや小説、オーディオ、真剣な未来像の話を交わした場所である。

洒落たインテリアの一角に大好きなドーナツを前にした自分が大人の入り口に間違いなく立っているという高揚感の中、友人を目の前にしたテーブルの横に大きな絵が掛けられていた。深い群青を背景にした愁いを帯びた女の子が描かれていた絵は心に残る印象的な表情と色合いだ。

絵の下には金色のプレートで「ねむの木学園」と書いてあった。「ねむの木学園って何だ?」。そんな疑問を抱きつつ、それが障がい者施設であり、障がい者の芸術作品を創り出していることを知ったのは大学生になってから。このねむの木学園の創設者であり、理事長である宮城まり子さんが今月亡くなられた。

福祉の領域での支援活動に「教育」の概念を取り入れる活動をしている私にとって、宮城まり子さんはいつかは会って、お話をうかがいたい人だった。私が「ケアメディア」の取材や文部科学省による障害者の生涯学習の委託研究する中で、「必ず会えるだろう」「会う計画を立てよう」とも思っていた。

高校生の頃に出会ったあの絵の時代そのままに宮城まり子さんは永遠に不死身のような錯覚をしてしまったのが、不覚だった。障害者に愛を持って、その可能性を信じて、芸術や才能を社会に発出した行動を倣いたいとの思いを伝え、宮城さんからの言葉をいただきたかった。

就労支援の幅の中で、特性を生かし、その芸術的可能性にも目を向け形にした実績と言えば何か軽くなる印象があるが、制度のない中で施設をはじめ、結果的に人間の真の豊かさを証明した半世紀にもわたる功績は偉大である。

1955年に「ガード下の靴みがき」で歌手デビューし、舞台やテレビで活躍していた宮城まり子さんが日本で初めての肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」を設立したのは1968年だった。それは管理するための施設ではなく「学園」、学びの場としたのは、それぞれの可能性を信じる信念によるもので、教育方針・運営方針に「絵画・音楽・ダンス・詩・作文・茶道・工芸など感性を育てることを重視した教育を行っている。

これは、情感豊かな人間性を育成」することを優先すると明言し、「こどもの多種多様な持てる能力を引き出すためには、それぞれのこどもに応じた自由で柔軟な教育を行うことが必要である」ことが重視されてきた。この「自由」「柔軟」の理念に支えられ、創作された絵画は創造性豊かな作品として、世の中に認められることになり、全国の多くの人が知る「学園」となった。

ミスタードーナツが大阪府箕面市に第一号店をオープンさせたのは1971年で、ねむの木学園の子どもたちの絵が展示され始めたのは1979年。その後、ミスタードーナッツは1981年に「広げよう愛の輪運動基金」が財団法人として認可され、現在の「ダスキン愛の輪基金」の母体が出来上がった。

ミスドの社会活動への取組の象徴が店内の絵と言ってもよいだろう。その絵に印象付けられた自分が福祉の仕事をしていることを考えると、案外、ミスドの絵で福祉職に誘われた人も少なくないかもしれない。

結局、宮城まり子さんの生きた言葉に直接出会えなかったが、「ねむの木村」や「ねむの木こども美術館」など、その遺したものを訪れ、感じながら、障がい者と表現や芸術について知見を深めていきたいと思う。

image by: ウィキメディアコモンズ経由で

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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