大事な何かを捉えてくる。和歌山発のアート作品が面白いワケ

 

私もポングリさんにお願いし、関係する障がい者支援事業所で利用者にハンコでのアートを体験してもらったが、ハンコを組み合わせ完成させた利用者がそこから色をイメージし、そして仕上げていく過程は、どんどん感性が前に出てくるような印象だ。気持ちが表に出て、それを言葉にしながら、他者と交われる、ワークショップでポングリさんが言うように「うまい下手はない」のが、このアートの優しさである。

この優しいアートで表現する世界だから、作品は私の大事なテーマである「ケア」に結び付いてくる。どんなアートであれ、斬新であっても革新的であっても、ほんのわずかでも「ケア」がなければ、私の中には響いてこないから、ポングリさんのアートはケアの中に芸術がある、などと勝手に見立てている。もちろん、これはまったくの私見であるが。

カフェヌックは私自身、毎年東日本大震災の時期に「気仙沼線写真展」と題して震災で鉄路での復旧が見込めない気仙沼線のかつての姿を写真で展示し震災を感じてもらう企画を7回にわたって行っている会場である。立地の良さもあって、是非ポングリさんのアートを東京の人にも見てもらいたいとの思いでお声がけして個展が実現した。

作品のエネルギーは、ポングリさんがアーティストとして「はじけている」ところが重要で、これは自分をふりかえると、私自身いろいろと社会活動しつつも、私はそんなに「はじけている」人間ではないし、どうしても気持ちが内省的に向き、行動を自制するほうが優先してしまい「はじけられない」のである。だから、「はじける」エネルギーを持つポングリさんはとてもうらやましい。

といっても、私の性分はどうしようもないので、はじめる人を応援することで楽しんでいる。「はじける」「はじけない」の組み合わせで、今後もやさしい言葉で語らいながら、この世に向けて何かメッセージを発していければと思う。

image by: 奥野亮平(ポングリ)さんTwitter

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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