巨大台風が襲う日本には「ハリケーン・ハンター」で救える命がある

 

ハリケーンの中を飛んでみた

Q:私(坂本)は鹿児島空港でプロペラ機に乗り換え、屋久島に行ったことがあります。この往きの飛行機が強い風雨のなかジェットコースターのように上下し、翼がブワンブワンと初めて見るものすごい揺れ方で、なかなかスリルがありました。離陸してしばらく大声ではしゃいでいた屋久島登山を目指す女性グループも押し黙ってしまい、挙げ句「この程度では飛行機は落ちません。ご安心を」というような機内アナウンスがあった(笑)。飛行機でハリケーンや台風に突っ込んで大丈夫なのか、気になりますね。

小川:「金属疲労の知見などが不十分で、レーダーの性能も低かった昔の航空機と、現在の航空機は、安全性が大きく異なります。ハリケーンに突っ込むと、乱気流や上昇・下降気流が強く、雨も激しく、かなり揺れる場合がありますが、簡単に空中分解などはしませんよ。NOAAサイトの『よくある質問』から引用しておきます」

【質問】なぜNOAAのハリケーン・ハンター機は嵐の中でバラバラにならないのですか?

【答え】飛行機が飛行中に強風によって破壊されることは通常ありません。旅客機は冬の間、アメリカ上空で時速150マイル(約240km)を超えるジェットストリームのなか定期的に飛行します。航空機を破壊し制御を失わせる原因となるのは剪断力、または水平か垂直の風の突然の変化です。これがNOAAのハリケーン・ハンター機が竜巻のなかを飛ばない理由です。そういうわけで、NOAAのパイロットと乗組員はハリケーンの強風環境で日常的に(カジュアルに、ではありません)飛び、飛行機が引き裂かれることを恐れません。ただし、彼らはレーダーで特定できる厳しい天候と剪断の「ホットスポット」をつねに監視しており、非常に厳しい場合は回避しています。

https://www.omao.noaa.gov/connect/faq/why-arent-noaas-hurricane-hunter-planes-torn-apart-storm

「海洋大気庁でハリケーンハンターとして40~50のハリケーンに突入した経験のある元海軍パイロットのジャスティン・キビー氏は、2017年9月にカテゴリ4(風速59~69m)からカテゴリ5(風速70m超。これより強いカテゴリはない)になったハリケーン『イルマ』の中を飛び、『今までに飛んだことがない、もっとも激しい乱気流の嵐だった』と語っています。飛行機は激しく揺れることがあり、非常に騒々しく、計器を読むのも対気速度を読むのも難しくなる。経験したことがない人にとっては、非常に不安な経験になる恐れがある、と」

「でも、ハリケーンの目に出ると、そこは穏やかで、なんともシュールな、すばらしい光景のようです。これは、ぜひ一度、自分の目で見てみたいですね」

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ハリケーン・イルマの目の中への飛行 (NOAA=海洋大気庁、下記YouTube映像2本目)

A handful of “hurricane hunters” are paid to fly directly into storms. Here’s what it’s like
(ニュースサイトQUARTZ 2017年9月16日)

●NOAA Hurricane Hunter Flight into Hurricane Irma(2017年9月5日)
https://www.youtube.com/watch?v=w-ZG9sihidI
https://www.youtube.com/watch?v=EjCKB695Ip4
https://www.youtube.com/watch?v=u7UWWjkpd7o

「もっとも、台風に接近したら、フィクションにあるような、機体が雲に吸い込まれたりするようなことが起こるのかと思っていたら、何事もなくて拍子抜けした、おもしろくなかったという人もいます。南太平洋のパラオで台風のタマゴを観測するという飛行で、まだ充分に育っていなかったのでしょう」

台風観測、なぜあえて飛行機で? 計画主導者とパイロットに聞く、理由やリスクとそのリアル
パラオでは「なにもなかった」 (乗りものニュース 2016年11月23日)

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