悪夢が現実に。欧州を「中国依存症」にした習近平が狙うEU支配

 

「自由主義陣営による協調を通じた中国封じ込め」の構図

一つは半導体部門やIT、AI/5Gといったハイテク技術を通じた世界市場でのシェア獲得競争という、いわばピュアな経済政策上の競争(ゆえに戦略的競争)と捉えることが出来ますが、より重要なのはもう一つの側面と言えるサイバーセキュリティに纏わる諜報・情報戦での対立です。

メディアにおいてよく語られるのは、対米サイバー攻撃の主と言えばロシアですが、件数的にはさほど多くなく、対象も政府機関やメディアといった比較的大規模なものが多いとされています。

それに比べ、中国のサイバー攻撃の場合、企業や個人が使うPCやサーバー、携帯電話(特にスマホ)にbackdoorを仕込み、日常的に個人情報を抜き取っていくという手法が主だとされています。それゆえに、トランプ政権が執拗なまでにファーウェイ社を敵視したと言え、この方針は、オースティン国防長官曰く、バイデン政権下でも継続・強化されるとのことです。

そしてサイバー攻撃への対抗は、トランプ政権時代から開始されバイデン新政権でも強化される【自由で開かれたインド太平洋】(戦略)の下、日米豪印をクワッドとし、そこに今後、広範なアジア太平洋戦略を打ち出したドイツとフランス、英国が加わり、“自由主義陣営による協調を通じた中国封じ込め”の構図が構築されることになっています。

アメリカがこのアライアンスを重要視していることが分かるのが、今回、カート・キャンベル氏をインド太平洋調整官に任命し、アメリカの対アジア外交方針の一貫性を確保し、軍事から貿易までを含む包括的な対中包囲網の指揮を執るという体制づくりです。言い換えると、これまでの場当たり的なアドホックな対中強硬策から、一貫性のある対中強硬策への転換と言えるでしょう。

私が今後、米中関係でアメリカサイドから注目しているのが、台湾の扱いです。トランプ政権でも、その終盤にはこれでもか!と言われるほど台湾と接近・優遇し、中国に【有事の際にはアメリカは台湾を護るぞ】といったメッセージを送りましたが、この台湾カードは、バイデン新政権の対中外交でも用いられるようです。

キャンベル氏の周辺やブリンケン国務長官の周辺の情報を集めると、「台湾カードは非常にデリケートな扱いが必要で、ハンドリングを間違えたら、中国を過度に刺激し、アメリカを望まない長期戦争に突入させる恐れもある」との見解を示していますので、直接な軍事的圧力という性格ではなく、どちらかというと、今、中国と競争の最中である台湾TSMCが持つ圧倒的な半導体技術とマーケットシェアを米中どちらがものにするのかという“最先端技術と経済”の側面での競争が主だった理由だと思われます。

確実にバイデン新政権は、中国の人権蹂躙問題については大変厳しい態度を取ることになり、それは欧州の同盟国を引き寄せることにも繋がると期待されますが、恐らく最もデリケートで激しい対立の舞台は、台湾を巡る争いでしょう。

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