悪夢が現実に。欧州を「中国依存症」にした習近平が狙うEU支配

 

中国が狙う「国家資本主義陣営による逆封じ込め」

では中国側から見た【バイデン大統領のアメリカとの付き合い方】はどうでしょうか?

一言で言うと、「アメリカとの競争と対立は継続」し、「アメリカとその同盟国の包囲網に対抗するべく、国家資本主義陣営による逆封じ込め」を画策するということになるでしょうか。

そのカギを握っているのが、

【コロナワクチン外交】
【AI/5G】
【南シナ海での領有権】
【RCEP】

そして

【一帯一路政策の西進】

です。

南シナ海問題を除けば、他は【経済的覇権を築き、国々を取り込む】という戦略に繋がります。先週にもお話しした通り、東南アジア諸国は米中間でのバランスを、これまでのところ上手に使い、“いいとこどり”に近い戦略を取ってきていますが、ミャンマーやカンボジア、ラオス、スリランカといった、すでに一帯一路政策を通じた対中累積債務に苦しむ国々は、言葉は悪いですが、中国のスポークスパーソンになってしまっているといえます。ASEANの会議で中国警戒論が話し合われるたびに、このような中国シンパにされてしまった国々が、合意文書の内容を骨抜きにするという中国の外交エージェント的な役割を果たしています。

同様のことが、アフリカ、特に東アフリカ諸国で顕著に見られていますし、まだオイルマネーが潤沢にある中東アラビア諸国も挙って中国の外交的エージェントです。脱炭素時代に向け、中国からの技術支援と協力を得て、かつまだエネルギーに飢えている中国による安定的な原油・天然ガスの購入という“おいしい餌”に釣られているのが現状です。これで中国から西アジアと言われる中東地域までが一帯一路政策で繋がり、その道は東アフリカにまで伸びています。

ここまでだとただ単に“線で結ばれる”だけですが、それを面に変えようとしているのが、昨年合意してスタートすることになったRCEPです。

21世紀の経済成長のエンジンと評されるのが東南アジア諸国とアフリカですが、RCEPではそのうちの一つである東南アジア諸国を一つのマーケット化するという狙いが付けられています。メディアの報道では“日本が主導的な役割”を果たしていると言われますが、実質的には、RCEP加盟国の本音は【日本は対中防波堤で、実質的にはRCEPは中国によるアジア市場席巻のメカニズムにすぎない】ということが出来ます。圧倒的な経済力と資本力、技術力を誇り、新型コロナウイルス感染症の“おかげで”東南アジア諸国経済が停滞する中、中国による“支援”は、同時に中国による“支配”に姿を変える基盤となっています。

東南アジア諸国の中でもフィリピンやインドネシア、シンガポール、そしてベトナムなどについては、まだ中国から押し寄せる経済力の荒波に耐える体力があるかと思いますが、他の国については、RCEPにインドが不参加であるがゆえに、中国からの波に呑まれるしか生存のための方法はないという状況になります。そう簡単にはいかないと思いますが、RCEPを通じて、中国による経済支配は線から面へとの深化・進化を遂げることになります。

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