悪夢が現実に。欧州を「中国依存症」にした習近平が狙うEU支配

 

バイデン新政権でも継続される対中強硬策

まずアメリカですが、バイデン新政権は中国との関係について【戦略的忍耐と競争】というコンセプトを挙げました。ご存じの方も多いかと思いますが、戦略的忍耐は、オバマ政権時代に対北朝鮮外交で用いられた表現です。オバマ大統領が「北朝鮮が核開発を放棄するまで対話には応じない」と宣言したのがこの“戦略的忍耐”になりますが、結果として北朝鮮にさらなる核開発と弾道ミサイル開発の時間稼ぎを許したというジレンマがあります。

その表現をあえてなぜ使ったのかは謎ですが、恐らくトランプ政権のように圧力一辺倒・中国の孤立政策一本やりではダメというメッセージを込めたかったのではないかと推測します。

そしてそこに“競争”を並列で含めたことで、バイデン新政権でも対中強硬策は継続されることを意味します。

新たに国務長官に承認されたブリンケン国務長官もいうように、パリ協定(気候変動対策)やWHOを通じた国際保健衛生政策などにおいては米中間で協調できる可能性があるが、貿易や人権問題、環太平洋地域の安全保障問題といった政策においては、トランプ政権同様、もしくはそれよりも厳格に中国を警戒し、止まることを知らない領土的野心と覇権拡大への野望に対抗することが決定されています。同じ方針は実質的に対中貿易の問題を扱う商務長官とUSTRの代表、そしてオースティン国防長官の発言でも示されています。

そしてハードラインの極めつけは、ポンペオ前国務長官が発言し、ブリンケン国務長官が追従した【中国政府が行っている新疆ウイグル自治区での再教育は、ジェノサイドに当たる】との非常に強く、また稀な発言は、バイデン新政権での対中ハードライナー外交と対応を予感させるエピソードではないかと考えます。

もちろん、中国政府は即座に反論していますし、“人権の守護者”を自任する欧州各国も、さすがにジェノサイドという表現を使うことを躊躇い、これまで通りに「人道に対する罪」という、私も国連安全保障理事会などでよく耳にした表現に止まっています。

論者によっては「米欧間の対中封じ込めの連携は一枚岩ではない証拠」との発言もありますが、私は単にGenocideという表現が意味するところの定義上のズレにすぎないと思っています。とはいえ、“ジェノサイド”という表現の援用は国際社会をすでに驚かせています。

ちなみにバイデン新政権の対中政策は、気候変動や国際保健といった分野を除き、ほぼトランプ政権の方針を継続しています。禁輸措置や中国系企業の米国内でのオペレーションの封じ込めといった側面は、実際にどうするのかは今後の展開を観なくてはならないですが、基本線は中国への警戒を継続するということのようです。

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