悪夢が現実に。欧州を「中国依存症」にした習近平が狙うEU支配

 

バイデン大統領がトルコに迫る「踏み絵」

フランスについては、予てより欧州防衛軍を創立・強化したいと訴え、欧州でのリーダーシップを狙っていますが、旧宗主国としての顔も未だ強く、南太平洋にフランス領を持つ国として、南太平洋とアフリカ、欧州をつなぐ海域を中国に分断されたくないという危機感も抱いています。また、今、中国の影がちらつくギリシャが地中海においてトルコと戦う際にも、ギリシャの後ろ盾として介入していますが、表面的にはトルコと対峙していても、ギリシャをはじめとする地中海諸国への中国勢力の伸長を非常に警戒しているがための動き・介入といえます。旧宗主国としての顔と欧州のリーダーに返り咲きたいという宿願が、フランスの対応を鈍らせています。

そのようなどっちつかずの対応は、バイデン新政権を非常に苛立たせているようです。就任前から、トランプ前大統領によって崩された欧米間の協調関係の修復を謳っていましたが、投資協定以降は対欧州不信感が高まっているとのことです。

その表れか、欧州各国への当てつけなのか、今週、NATO事務総長との電話会談でNATOを通じた大西洋を挟んだ協力の復活はもちろん、アフガニスタンやイラク、シリアという域外の問題への対応でも協力が“必要”という認識で合意し、広範にNATO憲章第5条(集団的自衛権の行使)を適用する旨、合意したようです。

これはオリジナルの「共産主義圏への対抗(ソビエト連邦からの圧力への対抗)」という趣旨を「ロシアへの警戒」に置き換えるというのと同時に、今では「中国からの圧力への抵抗」に置き換えて、欧州各国に踏み絵を迫っているのではないかと思われます。

同様の圧力は、先述の通り、中国からも押し寄せており、見事にEUは米中対立の真ん中で身動きが取れなくなっていると言えるでしょう。

そこに横やりを入れたいのが、エルドアン大統領のトルコです。トランプ前大統領とは喧嘩はしつつも馬が合ったようですが、原理原則を押し付け、就任前からエルドアン大統領を独裁者扱いするバイデン新政権への対応に苦慮したのか、これまで欧州や中東諸国を相手にフリクションを起こしてきた現状を収めようとするような動きを取り始めました。

例えば、歴史上嫌っているエジプトとの対話を模索したり、イスラエルとの対話を行ってみたりと、関係の修復を図ることで、バイデン新政権から直接的なターゲットになりたくないとの思惑が見え隠れします。ただ、これまでの所業もあり、周辺国もエルドアン大統領の変わり身の真意を測りかねているようで、期待されているほどの効果は生まず、このままでは、バイデン大統領から厳しい姿勢で臨まれるのではないかと思います。特に「NATOの同盟国として振舞うか、それとも敵になるのか?」という踏み絵は、そう遠くないうちに迫られるのではないかと私は読んでいます(アンカラからのニュースです)。

中国にとってもトルコの存在は複雑なようです。一帯一路政策の伸長のためには、欧州ルートでもアフリカルートでも、トルコを通過する必要があり、それをよく認識しているエルドアン大統領の複雑怪奇な外交により、トルコとの関係をどうしたものか悩んでいるそうです。イランの味方という点では安全保障政策上共通点はありますが、外交全体で共通の立場を取ることが出来るかといえば、そうとも言いきれないというのが実情のようです。トルコの微妙な立ち位置もまた、米中関係の狭間で非常に複雑になっているといえるでしょう。

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