コロナ禍でも死者数は激減。病院に行かないほうが死なずに済むのか?

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新型コロナウイルスによる感染症で多くの方が命を落とす中にあって、昨年の死者数が前年を下回る可能性が高いことが明らかになりました。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、健康社会学者の河合薫さんがその理由を考察。さらに国立がん研究センター中央病院の研究グループが公表した調査結果を取り上げつつ、日本と欧米の「がん治療の現場の差異」を紹介しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

病院に行くと寿命が縮まる?

昨年1~11月の死者数は約125万人で、前年同期比で約1万5,000人も減少していたことがわかりました(厚労省の人口動態統計速報)。12月に新型コロナの死者が急増したものの、年間を通しての死者数は11年ぶりに前年を下回ると予想されています。

死者数が減った理由として、「コロナ禍で受診を控えたことで、病院で他の病気に感染する人が減った」「薬の多剤併用の改善」などがあげられています。

「病気を診てもらいたくて病院に行って、寿命が縮まる」とはあべこべの気もしますが、確かに冬場など病院でインフルエンザをもらってきてしまうことはあるし、薬の飲み過ぎの危険性はかねてから指摘されていました。

さらに、高齢になると「病院で精密検査受けた」だけで、「自分はどこか悪いのではないか?」「家族は隠しているのではないか?」と不安になりストレスが溜まってしまったり、主観的健康が著しく低下する場合があります。

主観的健康は「私は元気だ」と思えるかどうかで、寿命に大きな影響を与えます。主観的健康の高い人と低い人とでは10年も寿命に差が出るという研究結果もあるほどです。

とはいえ、「受診と死亡率」の因果関係を示したデータは存在していないので、前述したいくつかの「理由」はあくまでも可能性です。なので「そういうこともあるかもね」くらいで受け止めておいた方がいいかもしれません。

そんな中、国立がん研究センター中央病院の研究グループが、実に興味深い調査結果を公表しました。「手術+抗がん剤治療」と「抗がん剤治療のみ」の患者さんを比較した結果、手術をしてもしなくても「生存期間が変わらなかった」というのです。

調査では一昨年までの7年間に治療を受けた「ステージ4の大腸がん」の患者160人を比較。「大腸にあるがんを切除した人」と「切除しなかった人」の生存していた期間はどちらも平均して2年2か月ほどで、差がありませんでした。さらに、「切除した人」の方が抗がん剤を受けたときに重い副作用が出る頻度が高かったことがわかりました(ステージ4は他の臓器に転移している)。

「がんがあると手術で取り除きたいと患者も医師も思うが、必ずしも手術が良いわけではないと分かったのは、患者の治療にとって意味のある結果だ」(by 研究グループ)―――

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