腰抜けニッポン。中国包囲網に大穴をあける菅政権の“媚中売国”病

 

ドゥテルテ大統領も中国の軍門下に

経済力と軍事力、そして戦略的物資の流通という合わせ技で、中国が支配を拡げたのがASEAN諸国とアフリカ諸国(特に東アフリカ諸国)です。

世界が新型コロナウイルス感染症のパンデミックで混乱する中、ワクチン開発能力がある先進国は、自国民への接種と供給を最優先とし、体制が脆弱な途上国を見捨てざるを得ない状況になりました。WHOなどの音頭でCOVAXファシリティが設立されていますが、その供給能力はまだまだ低いといえます。

そのような中、クオリティについては批判や懸念があるものの、見た目は非常に気前よく、中国政府はアフリカ諸国やASEAN諸国、ラテンアメリカ諸国に中国製ワクチンを配布することで、イメージ改善に乗り出しています。

“見た目は”とここであえて言ったのは、無料供与は平均すると初回の10万回分のみで、供与時にメディアなどで大きく取り上げさせてイメージ戦略を実行した後は、今週の赤道ギニアのケースにもあったように、【以降は協議の上】という条件を付すという、非常に巧妙な手口を用いています。

報じられる批判的な話の内容としては、「あくまでも商売として販売する」という儲けがクローズアップされ、「中国のがめつさ」が強調されていますが、実際には、ここでも【中国への支持を暗に要求する忖度外交】ではないかと考えられます。

結果はともあれ、WHOからのコロナ感染起源を巡る立ち入り検査の邪魔をしたと受け取られたことで悪化していた中国への心情は、スピーディーなワクチン供与を受けて向上するという効果を発しています。

それに加え、なかなか接種が進まない先進国を尻目に、スピーディーかつ広範なワクチン供与を通じて、2021年のコロナワクチン市場のシェアアップという狙いも見事に的中しているような感じがします。もちろん、これまでは…という大きな条件つきですが。

同様の効果は、同じく迅速なワクチン供与を受けた東南アジア諸国でも見られます。

こちらについては、ワクチン外交に加え、一帯一路による経済的な縛り、そして圧倒的な武力の誇示という合わせ技が使われています。

南シナ海における中国の一方的な領有権の主張と九段線の設置、そして人工島の建設と軍事化という一連の動きは、多くの沿岸諸国、特にフィリピンとヴェトナムを激怒させ、一時は戦争も辞さないとの強硬姿勢での対峙に至っていました。

それを大きく変えたのが新型コロナウイルス感染症のパンデミックです。これにより、領有権に対する大きな懸念は残るものの、背に腹は代えられないとのことで、各国の対中強硬姿勢に陰りが見えます。

その典型例は、あのドゥテルテ大統領のフィリピンです。

米中の外務担当者同士の会談が、予想以上に対立構造を浮き上がらせ、米中関係の折り合いが見えないことが明白になったことを受けて、中国は武装漁船を200隻、フィリピン近海に駐留させて、同海域のコントロールを掌握しました。

これまでならば、激怒してフィリピンが中国に対抗してくるところですが、まるで牙を抜かれたトラのように、反論は見せず、「あくまでも様子見をする。対応はASEAN各国と協議する」という対応になってしまいました。

単純化しすぎだとの批判もあるかと思いますが、ASEANの暴れん坊も勢いを削がれ、中国の軍門に下ったといえます。ASEAN諸国は、恐らくアフリカ諸国に比べると、まだ中国への依存度は低いかと思いますが、それでも確実に、そして着実に、中国の勢力圏に飲み込まれる寸前まで来ているかと思われます。

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