稲盛和夫が毎夜見た「倒産の夢」。経営者を苦しめる意思決定の原則

Miniature people: Businessman standing on start point of maze using as background business concept.
 

■業務的(生産性向上)意思決定

企業の仕事には2つの相異なる性質の仕事があります。1つは現時点の収益を最大化するための既存の事業の仕事で、もう1つは将来の収益を獲得するための革新の仕事です。

ドラッカーは、この2つについて、尺度、予算、支出の面からまったく異なるアプローチのあり方を指し示しました。

「既存事業について発する問いは『この活動は必要か。なくてすむか』であり、答えが『必要である』ならば、次に発する問いは『必要最小限度の支援はどれだけか』である。これに対して、イノベーションについて発すべき第一の問いは、しかも最も重要な『これは正しい機会か』である。答えが『しかり』であるならば、第2の問いは『この段階において、注ぎ込むことのできる最大限の優れた人材と資源はどれだけあるか』である」

意思決定においても、これを踏まえて考えます。また「意思決定の原則」として

「意思決定は常に、可能な限り低いレベル(現場)、行動に近いところで行う必要がある。これが第1の原則である。同時に意思決定は、それによって影響を受ける活動全体を見通せるだけの高いレベルで行う必要がある。これが第2の原則である。」と語っています。

その意味するところは、価値活動や戦略的な意思決定と、各分野の成果目標、制度設計、予算や人材配置についての意思決定は、トップマネジメントもしくはトップマネジメント・グループが行うが、それに基づく品質向上、コストダウンについての具体的な意思決定および実現ついては現場に権限委譲するということです。

これからひとくさり、新たな展開で説明を続けることになるのですが、ドラッカーの風になれない人は、思考負担が多く疲れるばかりだと思いますので、ここで一区切りとしてやめます。さて、現場に権限委譲での意思決定に堪能な企業を並べると「カイゼンのトヨタ」と「アメーバ経営の京セラ」ということになります。

最後に「起業的意思決定」と「戦略的意思決定」は、トップマネジメントの専権事項で、これを間違えると企業に未来はなくなります。先に言ったように松下幸之助さんは「血の小便出るまで考え抜き」京セラの稲盛さんは「何回も倒産の夢を見て目覚め」トヨタの豊田章男さんは「今日も一日生きてこられた」と噛みしめながら果たされています。

こんな過酷さに耐えなければ、さらに喜びを感じなければ、まともな経営者として責務を果たすことができないらしいので、社長業とはつくづく苦難なもので、それについて強い自覚が誇りになるのでしょうか。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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