「不要不急」に大きな落とし穴。政府の四字熟語が国民に全く響かない訳

 

この現象をより現代社会に合わせて言うならカタカナ・ビジネス英語の濫用がそれに近い。原義は(ほとんどの場合分からぬまま)ともかく、何となく分かったような気がすれば(あるいは気にさせれば)それでいいというやつである。

かくしてスカスカに形骸化した「不要不急」が世に出回ることになってしまうのだが、残念なのは本来そういった言葉の定義に厳格な筈の記者たちがこれに関しては少しも突っ込んだ議論をしかけなかったということである。

「総理!不要不急のイベントとは具体的に何ですか?」「それがなぜ他のものよりも必要性があり、緊急性があると言えるのですか?」「それならどの点において必要不可欠であり、緊急不可避なのか教えてください」こういった質問がなぜ出なかったのか。日本のマスコミも地に落ちたものだ(仮に酌むべき事情があったとしてもである)。

リモート授業を受けながらも夜になると駅周辺で街飲みをする若者がいる。リモート勤務をしながらも休みになるとアイドルなどのイベントに出張って行く大人もいる。スカスカな「不要不急」では何も引っ掛からないし、何も止められないのである。

コロナ以来「科学的根拠に基づいた」といった発言をよく聞く。しかし伝えるべき言葉自体の定義があやふやでは伝わる筈の内容も伝わらない。実に虚しいことである。情報が溢れる今だからこそ、却って一つ一つの言葉の定義の重要性は増している。これを忘れてはいけないと思うのである。

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image by:StreetVJ / Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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