衆院選は過半数割れか?お膝元の大惨敗で見えた菅自民「屈辱の下野」

 

だが、横浜市長選のあまりに無残な敗北は、このプランを大きく揺るがしている。「菅首相のままでいいのか」「総裁選で選挙の顔を決めるべきだ」との声が党内で高まるなか、菅首相が猛反発を覚悟のうえで解散を決められるだろうか。

定数465の衆議院で、自民党は276の議席を有している。過半数のライン233より43議席も多い。だが、菅首相の不人気ぶりからみて、このまま解散総選挙に突入したら、自民党の過半数割れが、あり得ないことではなさそうだ。

下手をすると、自公合わせても過半数を割り込むかもしれない。そうなった時、菅首相の責任は重大であり、その後に総裁再選などされるはずもない。だから、「解散」に尻込みするのが普通である。

そもそも、9月12日で緊急事態宣言を解除できるかが問題だ。感染の勢いが衰える気配は今のところない。いくらなんでも、こんな状態では解散、総選挙どころではないだろう。

やや落ち着いたとしても、これまでのように中途半端なタイミングで解除して、また再び流行がぶり返すようなら、信用は地に堕ちる。

こう考えてくると、9月の解散はなく、総裁選が9月29日投開票で行われる可能性が高いわけだが、菅首相は案外、総裁選について楽観的な胸算用をしているようだ。

安倍前首相、麻生副総理、二階幹事長は変わらず支援してくれる。そして、彼らの意向が各派閥所属の議員にあまねく浸透し、有利に集票活動が進むと思っている。

菅首相が自信を持つ理由はほかにもある。総裁候補の人材不足だ。確かに、他に誰がいるか、と聞かれたら答えに窮する。高市早苗氏や下村博文氏が出馬に意欲を示し、岸田文雄氏も立候補するとみられているが、いずれも力不足の感は否めない。岸田氏は名門派閥「宏池会」の会長ではあるが、政治力には疑問符がつく。

であれば、菅首相の命運を左右するといってもいい安倍前首相の本心はどうなのだろうか。菅支持を貫くのか、別に意中の人物がいるのか、それとも自身の再再登板もあり得るのか。

下村氏が総裁選への支援を要請したさい、安倍前首相は「急に後を継いだ菅総理が苦労しているのだから最後まで応援するのは当たり前だ」とかわしたという。高市氏が総裁選出馬を安倍氏に求めた時、安倍氏は「去年辞めて今年出るわけがないだろ」と断ったという。

これらの事実からは、安倍氏に再再登板の気はなく、あくまで菅支持を貫くかまえと見える。むろん、表舞台に復帰すればモリ・カケや桜を見る会などの疑惑が再燃する可能性が濃厚である。

しかし、仲間たちが総選挙で苦戦するのを承知で、安倍氏が菅首相にとことん義理立てするだろうか。

表向きは、菅支持を取り下げたりしないだろう。だが、支持の熱量には疑問がある。二階幹事長のペースで運んだ昨年の総裁選のように、細田派、麻生派、竹下派がまとまって総裁選で菅氏に投票するとは思えない。

昨年との最大の違いは、衆議院選挙がからんでいることだ。談合色を排し、透明性の高い総裁選を行うことで、選ばれる総裁の正当性も高まり、衆院選の行方にもプラスの効果をもたらすことができる。

昨年は、急場をしのぐためということにして、国会議員と都道府県連の代表3人が参加する「簡易版」ですませたが、今回は党員や党友も参加する「フルスペック」の総裁選となる見通しだ。

地方票が加わることで、民意に近い結果が出やすい。菅首相にとって、きわめて難しい総裁選になるのは間違いないであろう。また、そういう見方が強まれば強まるほど、菅離れに拍車がかかる。

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