河野氏が総裁選で炙り出した、日本を破滅させる軍拡論者と守旧派の正体

 

岸田文雄候補

新自由主義を脱する云々というのは、勿論、抵抗勢力におもねる姿勢に他なりませんが、強いて言えば脆弱化した地方経済に金を回したいということが根本にあるのだろうと思います。その意味で、この点に関しては石破式の発想法に似ているという理解をしています。

その一方で、再分配によって分厚い中間層を再生するという話は、少々疑わしいですし、まして「現代版の所得倍増」というのは、全くもって空想論に過ぎないという印象があります。

勿論、大学進学率50%という高い教育水準を誇りながら、一人あたりGDPが3万ドルを割り込む危険に直面しているというのは、おかしいわけです。高い教育水準を持った中間層が、正しい生産活動に従事していないわけで、ここを変えていかなくては日本経済の未来はありません。

ただ、そこに減税をするとか、補助金や公共投資でカネを回して雇用を拡大するといった「小手先の手法」では、そんな「分厚い中間層」の再生などということはあり得ません。

2つの問題があります。1つは徹底したコンピュータ化により「現状維持型の仕事は機械化する」ということで、その上で生身(なまみ)の人間は高度な判断や、未知の領域における試行錯誤など高付加価値な業務に移行してもらって、本来の「大卒という教育水準」を正しい生産性に結びつけなくてはなりません。

もう1つは英語であり、ITや金融においてアイスランド、イスラエル、韓国、シンガポール、インドなどが成功しつつあるのは全て準英語圏だからです。何故ならば、コンピュータのソフトウェア、そしてハードと連動したITの世界では、英語が公用語だからです。また、金融に関しては、勿論日本の場合は規制緩和をしないと話にならない部分もあるのですが、こちらも英語のインフラありきという話になります。

そうした変更を考えないで、漠然と再分配をすれば分厚い中間層が再生して経済も社会も安定するなどというのはファンタジーやイリュージョンとしか言いようがありません。その辺り、有権者のニーズに合わせて出してきただけなのか、それとも「中の人」が全く事態を分かっていないのか、岸田氏に関してはそこが最大の疑問と言えます。

あとは、岸田政権ということになると、清和会(細田派)が下野することになります。つまり、森喜朗が小渕氏の死去を受けて強引に政権を奪って以来、麻生という多少の例外を除くと延々と続いてきた清和会主流体制が壊れるわけです。

その一方で、岸田氏は保守票欲しさに「中国の人権問題担当補佐官」を置くとか、「敵基地攻撃能力」がどうとか、威勢のいい話をポンポンする傾向があります。その場合に、岸田=宏池会は本籍が中道なので、安心だという見方もありますが、清和会のように「表面は反中だが奥には対中チャネルがある」というような二重構造がないことで、万が一の場合は細かなコミュニケーションが途切れる危険を感じます。

つまり中国外交ということでは、最悪の場合に野田佳彦政権が尖閣国有化に突っ走って(石原の挑発に乗せられた面はあるにせよ)日中関係を乱したような「素人っぽさ」が出るのではないかという懸念です。

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