新型コロナウィルス禍で支給額が減少する年金受給者に対し、1人5000円を臨時給付する与党提案への批判が強まっている。予算額は1300億円以上となる見込みだが、それに加えて事務経費で700億円近くなると言う専門家の指摘がある。「また中抜きか」「パソナが大儲けするのか」など批判の声が上がっている。
「いい加減にしろ」選挙目当てのバラマキに国民激怒
年金の支給額は物価と賃金の変動に応じて、毎年改定されており、新年度の4月分からは今より0.4%引き下げられることが決定している。
受給額が減る年金生活者を支援するために、政府は「臨時特別給付金」を設けると発表。年金を受給する高齢者約2600人を対象に1回かぎりで1人5000円を支給する方針だという。
岸田首相は22日の参院予算委員会で「コロナ禍でさまざまな支援が行われているが、取り残されている方がいないかという問題意識に基づく提案だ」と弁明したが、野党は「夏の参院選目当てのバラマキにしか過ぎない」と批判した。
引き下げられた今年度の4、5月分の年金が支給されるのは6月15日。
参院選の公示はその1週間後の6月22日で、年金が減って不満を持った年金受給者にそっぽを向かれないためにもその前に給付金を配っておきたいという意図が透けて見える。
6年前の前回の参院選の前にも、同じように3万円相当の給付金が出ているが、ばらまきにしても5000円では効果があるのか疑問だ。
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アベノマスクの悪夢が再来?懲りない政府の愚策
また問題視されているのは、年金生活者1人あたりに給付するために生じる事業経費だ。
テレビ朝日によると、対象となる2600万人に対して5000円給付することから、単純計算として、支給金額約1300億円+事務経費約700億円=約2000億円かかると専門家の試算を報じている。
給付するだけでなく、それにかかる事業経費が莫大であり、当然のことながらそれは全て国民の税金から支払われる。
自民党のバラマキ政策のために700億円もの経費を費やす必要が果たしてあるのだろうか。
思い起こせば、似たような政府の愚策は数年前にもあった。記憶に新しい「アベノマスク」だ。
2020年、新型コロナ感染拡大防止のために全世帯へ布マスクを2枚配布するため、マスク調達費は184億円、配送費などに76億円かかった。
その後、マスクの品薄状態が解消され、8000万枚が在庫になり、保管費用は約6億円で、2021年度の費用は約3億円を超えた。今年度の再検品費用には総額21億円かかったが、本年度中に廃棄される見通しだ。
大金がかかったにもかかわらず、ほとんどの国民が装着しなかったことから、“呪いのマスク”とまで揶揄された。
また、「アベノマスク」、「GoTo事業」「持続化給付金」政府の対策をするときに必ず名前が上がってくるのが大手人材サービス業「パソナ」だ。
今回の5000円給付についても、もし支給が決定したとなれば、またパソナや竹中平蔵氏の名前が浮上してくる可能性がある。
ネットではすでに「パソナの中抜き決定」「竹中平蔵また大儲け」など批判の声があがっている。
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FNNプライムオンラインでは臨時給付金の批判の高まりを受けて、党内に差し戻され再検討される見通しだと報じた。公明党幹部も「今回は自民党の茂木幹事長の提案に合わせただけだ」と述べるなど、あらかさまなバラマキ施策に懸念を示している。強引に実現させれば、岸田政権の“大失政”になる可能性が高そうだ。