そのツケを払わされているのが、“官製ワーキングプア”と呼ばれる非正規の公務員です。彼らは「公務員の人手不足」を補う目的で雇用されているので、常勤公務員と仕事の差はなく、仕事上の責任も極めて重く、専門的な知識も必要とされています。
にもかかわらず、賃金は2分の1から3分の1程度。しかも、2年以上にわたるコロナ禍で、多くの地方自治体では、過重労働が常態化しています。過労死ラインを超えているのに、体調不良でも休めないケースや、残業代が支払われないケースも相次いでいる。なぜ、彼らの待遇は改善されないのか。なぜ、非正規公務員の働き方改革は、議論されないのか。
ハローワークで「私」たちに、正社員の仕事を必死で探してくれている職員が不安定・低賃金のワーキングプアであること、政治家さんたちはわかっているのでしょうか。
コロナ前から地方自治体の講演会の講師に呼ばれると、
「非正規公務員は、賃金がものすごく安い。現場から声をあげてもどうにもならなくて……」
「非正規公務員が住民のことをいちばん分かっているのに、彼らの経験知は全く評価されない」
「非正規公務員は、優秀な職員が多いのに」
「非正規というだけで、パワハラの対象になる」
などなど、「これでもか!」というくらい現場の担当者たちから“嘆き”を聞かされてきました。
そして、今。コロナ禍で、非正規公務員が厳しい状況にますます追いやられ、冗談のような過酷な現実を強いられ続けているのに、その環境にメスを入れる“声”は聞こえてきません。
そもそも「公務員=安定」のはずなのに、「非正規=不安定」という雇用形態で雇われているのは、訳が分かりません。しかも、正規と非正規公務員の間には、民間の非正規雇用以上の“理不尽な格差問題”が生じているのに、「公務員=安定」というパワーワードのせいで、厳しい実態が陰に隠されてしまった側面もあるのではないか。
繰り返しますが、「私」たちが役場で接する職員のほとんどが、非正規公務員です。高齢社会では、「顔」の見える存在こそが、住民の頼り綱。なのに、その彼らが報われていないのです。
私は、公務員に関する報道があるたびに、非正規問題をしつこく書き続けていますが、大手メディアの“熱”を感じることは滅多にありません。一部の優秀な人と「その他」に二分されている。これが日本の現実なのです。みなさんのご意見を、ぜひ、お聞かせください。
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