目指すは韓国料理版の町中華。養老乃瀧が新業態で打って出る挑戦

 

“韓流”に引かれて女子高生も利用する

「韓激」の特徴は、“メニューの絞り込み”と“低価格”である。前者に関しては、「冷菜 サラダ」7品、「キムチ」6品、「のり巻」5品、「炒め物」5品、「熱旨!韓国風餃子」3品、「韓式 餅料理」3品、「シェア飯」2品、「逸品料理」14品、「韓式 麺料理・ご飯 スープ」8品、「デザート」3品で五十数品となっている。後者では、品目数が多い順で述べると(税別表示)、200円代23品目、300円代15品目、400円代13品目となっている。

ビルの3階に出店している月島店では、1階で看板メニューの画像をアピールしている(筆者撮影)

ビルの3階に出店している月島店では、1階で看板メニューの画像をアピールしている(筆者撮影)

酒類も同様の発想。ビール、ウイスキー、ワイン、サワー、日本酒ともメジャーな酒類は全部そろっている。これにマッコリやチャミスル、美酢といった韓国のアルコール、ノンアルコールをラインアップ。一例を挙げると「角ハイボール」330円(税込、以下同)、日本酒(白鶴)「熱燗・冷酒」209円、「いつものレモンサワー」209円となっている。

フードメニューの中から「韓激 おすすめ」として「スンドゥブチゲ」352円、「石焼ビビンバ」528円、「チャプチェ」319円、「キンパ」385円、「ケランチム」(韓国風茶碗蒸し)528円、「ニラチヂミ」495円がセレクトされている。

谷酒氏によると、客単価は当初2,300円を想定していたが、現状は2,200円となっているという。原価率は30%。「鳥貴族」「串カツ田中」といった客単価が2,000円代半ばのチェーンと同等ないしはそれよりも低い。

メインターゲットは30代~50代の男性客を想定していたが、実際に開けてみると30代~40代のママ友的な女性グループや、20代カップルの利用が多い。オープンしたばかりの新潟駅前店では女子高生の利用が見られ客単価は1,900円となっている。“韓流”は若い女性にとって人気を博していて、それが日常的にはまだ少ない地方都市では強烈なコンテンツとなっているのであろう。

客層は現状、中高年男性よりも30代~40代に女性、20代カップルが多い(筆者撮影)

客層は現状、中高年男性よりも30代~40代に女性、20代カップルが多い(筆者撮影)

大皿の伝統に対しスモールポーションで提供

「韓激」が開発された経緯について谷酒氏はこう語る。

「コロナ禍にあって新しい業態をつくる必要性を感じていた。そんな中で“韓流”は流行っていたが、われわれは“健康的”という発想から韓国料理に入っていった。お酒もさることながら野菜を中心とした食事処となることを想定した」

このアイデアの元となったのは2021年の春、養老乃瀧が西武球場(埼玉県所沢市)に出店した店舗「コリアンダイニング 韓激」であった。「特製プルコギ丼」「韓国冷麺」「特製キンパ」といった弁当を800~900円で販売。この店は人気を博し、市中のリアル店舗で“食事もできる酒場”に可能性を見出すようになった。

「われわれもK-POPの人気ぶりを見ていて“韓流”の飲食店は繁盛すると思っていた。ただしK-POPの映像を流したり、内装にネオン管をつかったりするアプローチでなく、韓国料理をしっかりと食べていただきたいというメニュー構成にして、店名にも“大衆食堂”とつけた」(谷酒氏)

「韓国料理店」は、伝統的に料理が“大皿”で提供され“単品価格が高く感じられる”ということが共通している。スモールポーションで提供するのは日本特有のもののようだ。その点、養老乃瀧はわが国における大衆居酒屋チェーンの草分けであり、ディナー帯で大衆業態に求められているメニュー設計については熟知している。同社ならでは“大衆韓国料理店”に新しいトレンドを呼び起こすのではないだろうか。

現状で五十数品目という品揃えはついてどのような発想を抱いているのだろうか。

「これ以上増やす必要はないと思っている。必要とされるメニューは、チヂミ、ビビンバ、サムギョプサルといったメジャーどころ。この中からスンドゥブ専門店といった展開もできるが、今の段階では韓国料理に総合的な立ち位置で展開していく」と谷酒氏は語る。西武球場での実績もあり、ECでのスポット販売なども行い売上をつくっている。

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