元国税調査官が暴く、宗教団体「税制優遇」の実態と“政治の結びつき”

 

また宗教法人というのは、政治家とつながりを持っている場合も多いのです。小さな寺社でも地域の名士的な存在であったりするし、大きな宗教法人となると国政に影響を与えるほどの権力を持っています。その政治力を駆使することで、税務当局の監視を逃れるということもままあるのです。

だから、その宗教法人には一体どのくらいの資産があるのか、指導者や幹部たちが実質的にどの程度の収入、財産があるのか、ということは、税務当局にもなかなか把握できなくなっているのです。

そのため宗教法人というのは、小さな寺から大宗教団体に至るまで、脱税の温床と見られているのです。実際に、宗教法人は課税漏れ発覚率が非常に高い業種なのです。宗教法人は税務調査をすれば、だいたい課税漏れが発覚するというほどです。しかし大きな宗教法人は国税に圧力をかけてくるので、税務調査自体ができないことも多いのです。

なぜ宗教法人は優遇されるのか?

「宗教と政治の問題」「宗教と金の問題」は、これまでもたびたび社会問題となり、議論されてきたテーマです。特にオウム真理教の問題が起きたときには、宗教法人に対する優遇措置を改めるべきではないか、という議論が巻き起こりました。が、多少の修正はあったものの根本的な改善には至らずに現在まで来ています。

なぜ宗教団体は、これほど政治的に優遇されているのでしょうか?ざっくり言えば、政治家にとって票に結びつきやすいからです。宗教法人の場合、指導者が「●●党に投票しなさい」と信者に指示をすれば、信者たちのほとんどはその通りに投票します。

業界団体などでも、組織的な投票活動をしていますが、構成員はそこまで忠実に投票をしてくれるものではありません。構成員たちの中には、団体の意見に賛同しない人もいるし投票に行かない人もいます。

しかし宗教団体の場合、信者は必ず投票に行くだけではなく、自分の知り合いに電話をかけまくって支持を呼び掛けたりまでしてくれることもあります。なので、政治家にとって宗教票は「純度100%の組織票」なのです。宗教団体は「最強の組織票」といえるでしょう。宗教票を得るのと得ないのとでは大きな違いがあるのです。そのため「宗教団体の優遇制度」はなかなか是正されないのです。

ところで「宗教と政治の問題」「宗教と金の問題」というのは実は今に始まったものではありません。文明が始まって以来、ずっと人類はこの問題に悩まされてきたといってもいいのです。ヨーロッパでも日本でも、宗教は歴史的に様々な政治経済問題を引き起こしてきたのです。政治経済の歴史は宗教との戦いの歴史でもあるのです。次回は、そのことについてお話したいと思います。

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image by:Khhy, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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