東スポ餃子vs夕刊フジ小籠包。夕刊紙の「中華対決」が今アツい理由

 

“お通し”が『夕刊フジ』の居酒屋を展開

『夕刊フジ』代表の佐々木浩二氏はこう語る。

「おつまみ弁当は新幹線を利用するビジネスマンが『夕刊フジ』を手に取る感覚で新幹線の中で食事をするイメージ。おむすびは、かつて帰宅途上の電車で『夕刊フジ』を読んでいた人がリタイヤして自宅近くのコンビニで『夕刊フジのおにぎり』を買って“現役感”を思い起こしてもらう。新聞を売っているコーナーで『夕刊フジのおにぎりを売っています』というPOPを添えたところ、おにぎりが大層売れた」

「オレンジ世代酒場」の一例では、おすすめとして「オレンジ世代セット」(2時間2,000円)をラインアップ。トロホルモンロール、ジャンボ串カツ、煮込み、レバニラ炒め、酢もつ、食べ放題のキャベツ、飲み放題のハイボール付き、そして“お通し”として『夕刊フジ』を1部付けた。

これらの企画は“働き盛りのホワイトカラー”といった『夕刊フジ』の読者に寄り添っている。出張の新幹線、“現場感”を思い起こす、仕事帰りの居酒屋といった読者の生活シーンの中に『夕刊フジ』の存在感をアピールしている。

この度の「夕刊フジ飯店・生姜小籠包」のベースとなるのは“健康”である。『夕刊フジ』では毎号“健康”テーマの記事を2ページにわたって掲載、これがスピンアウトして2017年より年間5回『健活手帳』を発行している。この読者は既存の『夕刊フジ』のものに加えて、新しく女性を取り込んでいる。佐々木氏はこう語る。

「小籠包の発売を思い立った直接的な理由は『東スポ』が突然餃子を販売したから。しかし夕刊紙で食を扱うのは『夕刊フジ』の方が先で、ここで『東スポ』に負けられないという思いがあった」

新しい形でのマーケット創造

そこで『東スポ』の餃子に対抗して『夕刊フジ』では同じ点心の小籠包を打ち出した。ここに“生姜”をアピールすることで『夕刊フジ』が育ててきた「健康」テーマを刷り込んで女性にも訴求する。『東スポ』が“マシマシ”路線で行くのであれば『夕刊フジ』は“健康”ということだ。

「点心を売るということでは強敵はたくさんいるが、われわれ『夕刊フジ』は『東スポ』と競いたい。新聞販売ではお互いコンビニやキオスクで競っていて、食品も同様に競いたい。こういうことを消費者に面白がってもらうことが望ましい」と佐々木氏は語る。

キヨスクやコンビニでは毎度おなじみとなっている夕刊紙のタイトル対決

キヨスクやコンビニでは毎度おなじみとなっている夕刊紙のタイトル対決

『東スポ』の佐藤氏、『夕刊フジ』の佐々木氏ともにこのように語る。「食品事業を手掛けていても、ベースは夕刊紙」だと。『東スポ』『夕刊フジ』ともにそれぞれの“らしさ”と“強さ”を食品事業に託し、一過性のものではなく、「永く続けていく」と断言する。そして「お互い新聞で競っているが、食品でも競っていく」という。『東スポ』『夕刊フジ』は新しい形でのマーケット創造にチャレンジしている。

image by: 千葉哲幸
協力:株式会社東京スポーツ新聞社 , 株式会社産業経済新聞社

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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