ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、西側諸国が科した厳しい経済制裁。しかしその効果は極めて疑わしく、そもそもプーチン大統領には自ら退く意思は無いようです。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では著者で国際政治経済学者の浜田和幸さんが、欧米による経済制裁の恩恵を被っているのは他でもないロシアだとしてその理由を解説。さらにプーチン氏が安倍元首相に語ったという「尊敬する日本人将校」の名を紹介するとともに、ウクライナ紛争が「30年戦争」になってしまう可能性を示唆しています。
この記事の著者・浜田和幸さんのメルマガ
西側の対ロシア経済制裁は効果薄:プーチンは小野田寛郎を尊敬
ぶっちゃけ、ウクライナへの軍事侵攻を行ったロシアに対して欧米諸国や日本は効果の薄い経済制裁を継続しています。
ロシアが外貨収入源とする原油や天然ガスなどの輸入を制限することで、ウクライナ侵攻を経済的にも継続できないようにしようとする試みです。
しかし、侵攻から8か月が経ちましたが、戦況は長引くばかりで全く終わりが見えません。
確かにロシアは国際社会から孤立しているように報道されていますが、それは西側のメディアの一方的な「反プーチン」姿勢から出ている広報戦略に過ぎません。
実は、欧米による経済制裁の恩恵を被っているのはロシア自身なのです。
というのは、インドや中国などが値下がったロシア産の天然資源の輸入を大幅に拡大しているため、ロシアの貿易収支の黒字幅は急拡大を遂げているからです。
これでは何のための経済制裁なのか、アメリカ国内からも疑問や見直しの声が上がっているほどです。
日本を含め、西側の大方の見方は「孤立化するロシアやプーチンは早晩、方向転換を余儀なくされるだろう。しかし、“窮鼠猫を噛む”の例えのように、核兵器のボタンを押すことが心配される」といったもの。
とはいえ、こうした希望的観測は根拠が希薄としか言いようがない偏ったものです。
2014年のプーチン大統領と安倍首相の首脳会談を思い起こして下さい。
あの年はロシアがクリミアを併合した年。
プーチンが語ったのは、フィリピンのルパング島で戦後30年に渡り孤独な戦いを続けた旧日本兵の小野田寛郎氏のことでした。
曰く「俺は30年間もジャングルで一人戦い続けた、あのオノダのような男が好きだ」。
安倍首相は「プーチンの本音に触れた思いがした」と述べていたものです。
日本では関心を呼びませんでしたが、プーチンもオノダも共通のバックグラウンドを背負っていたことは注目に値します。
というのは、小野田少尉は陸軍中野学校の二俣分校の出身でした。
KGB出身のプーチンとは“同じ穴の狢”といっても過言ではありません。
先の大戦で日本は降伏していたにもかかわらず、小野田少尉は日本の敗戦を受け入れず、持久戦を戦い抜くことで、ルパング島における日本軍の再上陸のための準備を続けたのです。
そんな小野田少尉への熱い思いを吐露したのがプーチン大統領でした。
恐らく、周りが何と言おうと、プーチンはウクライナ東部で差別や虐殺の犠牲になってきたロシア系住民を救うためには、西側がどう動こうと一徹に戦いを続ける覚悟のようです。
10月26日、ロシア軍の陸海空の核戦力部隊がミサイル発射演習を実施したのも、その固い決意の表れに違いありません。
ぶっちゃけ、プーチンの孤独な闘いは「30年戦争」になるかも知れません。
この記事の著者・浜田和幸さんのメルマガ
image by: 首相官邸