反撃能力に適した武器か?日本政府が購入検討「米トマホーク」の正体

 

トマホーク自体がどういう経緯で開発された兵器かというと、米ソ間のSALT1。戦略兵器削減条約で米軍の戦力が落ちることを防がなければならないというキッシンジャーさんの命令で、これ、東京新聞に書いてあることですが、キッシンジャーの命令で、核ミサイルとして開発されたもの。核弾頭を狙い通りのところに運ぶ兵器として作られた。SALT1の規制の掛からない範囲の兵器として軍需産業が作ったのがこの兵器だと。由来がそうだから、すべて核兵器になるのだというつもりもないですが、そういう歴史を持ち、40年も前に開発されたのがトマホークです。

その後も開発は続いていて、もう4段階目くらいですかね。船から撃って地上の目標に当てる、それから水上艦船からだけでなく、潜水艦からも撃てるということで、湾岸戦争の当時も両方の例があったのだと思います。水上艦から撃つケースについては、米軍はわざわざメディアを呼んで撃つところを見せましたからね。間違いないことです。あ、飛行機から撃つのもあると思いますが、そういう存在ですよ。

これが、今問題になっている反撃能力に値する武器なのかどうかというのは、これはかなり怪しい面があるのではないでしょうか。何ら、相手の狙う場所の正確な緯度経度が分かっていないと、撃ちようがないわけですね。そういう問題があります。射程は吃驚するほど長く、最大で2,500キロ。今ウクライナで多連装ロケットハイマースの射程が一番長くて70キロくらい。これも凄いことですが、あるいはウクライナに供与されていないロケットで、ハイマースの仕掛けから一発だけ撃つ大きなミサイルがありますが、これが300キロと言われている。その8倍ですよ。その分、スピードも遅いのでしょうし、ただ、相手のレーダー網をくぐり、ハッキリここと決めたところに落とす兵器ですよ。これを持つことが、持っていることが、抑止力になるという議論になるのでしょうが、これはちゃんとした軍事評論家の意見も聞きながら議論しなければならない話だと思います。

まあ、今、防衛予算の話で変なことになっていて、安全保障に金をかけましょうという一般論になりつつあり、そのなかでは空港とかダムの改修というようなことまで入っている。科学技術的な開発、公共インフラ、サイバー戦、国際協力、そういったところに掛かるお金も全部入れようとしている。つまり、財務相に蹴られた予算要求の復活折衝のようになっている。それが防衛予算名目で2%のなかに混ぜ込めるからオッケーいう、政権の利益と合致して、そこに予算要求を放り込むことになっている。もうちょっとね。自民党が多数を握っている国会でどれだけ有用な議論が出来るのか疑問に思うところもありますが、日本の防衛ということで、安全保障の問題をどう考えたらいいかというのは、もっと大きな視野から論じるべきことだと思うのですが。そうならずにトマホークを買うかどうかと言う具体的なところに来ています。

さらに恐ろしいのは、いずれ与党内の右寄りの皆さんの側からはおそらく核を持つべきだという話に変わっていく可能性があるのではないかという懸念があります。つまり今度のことで、また「必要最小限度の措置」というね、しかもそれをやらないと日本に危害が及ぶので「万やむを得ず」というものすごく古くさい表現を使っていますが、必要最小限度の措置ということですが、相手は核保有国ですからね。どういう話になるのか。

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