笑顔で日本を揺さぶる習近平。林外相に王毅政治局員がかけた「言葉」

 

中国に接近する仏独伊そして欧州委員会の思惑

世界の分断が不可逆的な状態まで進んでいる中、欧州各国と中国の“和解”と“融和”が図られるのはいいことだと考えますが、見方を変えると異なる分断に繋がるようにも思われます。

一つ目は欧米諸国とその仲間たちの間にできる隙間です。今年に入って中国を訪問しているのはEU、フランス、ドイツ、イタリアの首脳ですが、G7という括りで見ると、米国、カナダ、英国、そして日本の首脳の訪中はありません。

中国の外交部によると、訪中を拒むことはしないが、特段、要請がないとのことですが、中国側の意図を見ると、欧米諸国とその仲間たちの結束にひびを入れようとしているように見えてきます。

中国がロシアとウクライナの戦争の仲裁に乗り出すと発表し、12項目の案を提示してすぐに、米国政府、英国政府、そしてNATOは「中国は信頼できない(ロシアに対する武器供与を行いながら、口先では和平協議というのは信頼できない)」と真っ向から否定した際、フランス・ドイツ・イタリア・EUは中国が仲裁に乗り出そうとしたことを前向きに評価しており、G7内での対中態度に温度差が生まれている様子が分かります。

G7各国によるロシアに対する批判的な態度は一貫していると思われますが、欧州委員会は別として、フランス・ドイツ・イタリアに至っては、米国や英国、カナダや日本に比べて、ソフトな印象を受けますが、中国に対する態度に至っては、そのギャップがより鮮明になります。

ロシアに対する経済制裁では一枚岩の結束を保とうとしていますが、中国に対する対応については、仏・独・伊そして欧州委員会は関係修復と経済関係の強化に振れているように見えます。

シンプルに中国と欧州各国との経済関係の修復と強化という実利に基づく判断に加え、恐らく中国が主導する方向で進むロシアとウクライナの間の仲介・仲裁において形成されていくポスト・ウクライナの世界に欧州各国が関与するスペースを確保しようという狙いから、中国に最接近しているのではないかと考えます。

その理由の一つが、報じられてはいないのですが、ドイツ産業界のエグゼクティブ・クラス(自動車、電力など)が挙って中国との対話を始めていますし、フランスの原子力産業や鉄道、電力などのトップも中国入りしています。そしてそれらの中国での活動を補助するための経済コミッションも再度開設して、政官民挙って中国との経済的な関係の修復と強化に乗り出しています。

それに対して、アメリカは台湾情勢をめぐる対立が激化し、口先では中国との関係改善を目指すというものの、蔡英文台湾総統とマッカーシ下院議長がロスアンゼルス近郊で会談したうえに、超党派の議員連盟による記者会見で米国政府・議会は一致して中国の脅威に立ち向かうと述べ、現時点では関係の修復の見込みが見えてきません。ビジネスからはいち早く中国との関係回復が必要との意見も寄せられているようですが、政府内での中国脅威論は高まるばかりです。

カナダについては、先のカナダ人に対する人権侵害およびカナダ国内でのスパイ活動の疑いなどが次々と表に出てきて、その対応に追われ、対立関係は激しさを増すばかりです。現在、外交フロントでの対話は途絶えており、先のHuawei問題以降、経済関係も冷え込んでいるため、カナダも中国との関係を回復・好転させるための準備はまだできていない状況です。

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