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ミャンマー情勢の安定化でASEANと欧米の引き離しを画策

ミャンマー情勢の仲介申し出については、まだどうなるかは分かりませんが、国際社会が挙ってミャンマーを見放す中(もちろん元凶は国軍のクーデーターですが)、ミャンマーに寄り添っているのが中国とロシアです。その中でも国境を接するということもありますが、歴史的に中国との関係は(良くも悪くも)深く、国軍にも大きな影響力を持つため、アウン・ミン・フライン総司令官と国軍側としては、自分たち寄りであるはずの中国が仲介することには乗り気だと思われます。しかし、中国の本当の狙いは紛争の解決よりは、ミャンマーに手を焼いている静かな隣国たち、つまりASEAN諸国との協力を通じた関係改善に本当の狙いがあると思われます。

中国と同じ【内政不干渉の原則】を貫くASEANとしては、ミャンマーのこれ以上の不安定化は、自国に対する不安定要因の波及にもつながりかねませんし、growth engineと目されるASEANへの投資判断にかかる政治リスクが高まる恐れがありますので、ミャンマー内戦の早期解決を切望しています。ただ、ASEANの言うことにミャンマー国軍が耳を貸さない状況が続いており、唯一、アウン・フライン総司令官が耳を貸す中国による停戦に向けた働きかけを歓迎する声が増えてきています。

同時に欧米諸国の投資が鈍る中、中国はASEAN諸国にも投資を増やし、経済面での結びつき(言い換えると、対中経済依存)を強めることで、口ばかり出してくる欧米諸国からASEANの引き離しにかかっているように見えます(これは、ミャンマー関連の調停準備を行っている際に、多方面から寄せられた分析です)。

中国経済圏・中国の勢力圏とまで呼ぶには時期尚早かもしれませんが、確実に地理的な近接性も活かしてASEANの取り込みを進めています(とはいえ、ASEAN諸国もしたたかで、日本にもしっかりとアプローチを強めて、投資を引き出すことは忘れていませんが、中国は“ここ”も抑えにかかろうとしているようです)。

そしてその動きは、アジアの隣国、インドが主導するグローバル・サウスの国々にも広がりを見せています。

グローバル・サウスの国々、特に南アジアとアフリカ諸国については、一帯一路政策による債務の罠を理由に中国を警戒する傾向がありますが、同じ国々は、上から目線でものを言ってくる割には何もしない欧米諸国とも距離を置こうとしており、現在、第3極として国際情勢の一つの勢力圏となってきています。

グローバル・サウスの国々の台頭が鮮明になったのが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、対ロ強硬派(欧米諸国とその仲間たち)・ロシアにシンパシーを感じる国々(中国、北朝鮮、イラン、シリアなど)に分断されるなかで、どちらとも一定の距離を保ち、独自のパワーハウスを築きだしたことです。

グローバル・サウスを率いるのは、インド・トルコ・南アフリカ・ブラジル・アルゼンチンなどの国々と言われていますが、インドを除けば、特段、中国との軋轢はない(低い)のが特徴です。それに反して、欧米、特にアメリカと緊張関係にあるのがこれらの国々の特徴とも言えます。

ブラジルの外交筋とよく話しますが、グローバル・サウスの動きについて聞くと、今、各国ともそれぞれの尺度で中国の意図と“本心”を見極めようとしているそうですが、昨今の中国による活発な調停努力を見て、少しずつ中国への評価がポジティブな方向に傾いているようです。

特にイランとサウジアラビア王国の間を取り持ち、イエメンでの終わりのない戦争を終わらせるトラックを敷いたことや、中東における一触即発の緊張を緩和する方向に導いたことは、ブラジルの友人の表現を借りると「中国は今、own interestsの追求の段階から、世界の利益と安定を考えるようになってきたのではないかと、グローバル・サウスの国々から見なされ始めている」そうです。

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