笑顔で日本を揺さぶる習近平。林外相に王毅政治局員がかけた「言葉」

 

中国がウクライナ戦争の仲裁に名乗りを上げた本当の理由

そこにロシア・ウクライナ戦争の仲介を中国が申し出たことで、グローバル・サウスの国々は中国の本気度を確かめようとしています。

特にゼレンスキー大統領が習近平国家主席にキーウ訪問を要請した件に対して、中国がどのように対応するかに非常に関心が集まっています。

先週号でも話しましたが、「行くも地獄、行かぬも地獄」となりそうな困難な事案ではありますが、モスクワを訪問してプーチン大統領と協議した今、行かなければ中国、そして習近平国家主席の仲介・仲裁に対する意気込みと中立性が疑問視され、一気にcredibilityが失われ、「結局、中国は中ロによる国家資本主義体制の拡大にしか関心がないのだ」と見なされる可能性が高くなります。

【関連】メンツ丸つぶれ。中国・習近平がゼレンスキーの「キーウ招待」を断れない理由

とはいえ、仮に要請に応えてキーウ入りしたとして、直接協議の映像がウクライナサイド、特にゼレンスキー大統領に“宣伝材料”として使われ、中国からの提案を蹴るような事態になった場合、中国の面子は丸つぶれとなるため、習近平国家主席周辺は非常に慎重にお膳立てをウクライナサイドと進めているようです。

そこで今週の欧州各国の首脳の中国詣での機会を活かし、中国の仲裁案への反応を探っているようです。独自の調査・分析結果と合わせ、欧州各国の反応を元に、
「行くか行かないか?」「行くとしたらいつが最も適切で、それはどのような形式であるべきか」、「行かなくても成果を収める方法は存在するか?するとしたらどのような方法か?」といったデリケートな問いへの最適解を出そうとしているようです。

すでにドイツとイタリアからはある程度の理解を得ていると聞いていますが、マクロン大統領とフォンデアライデン委員長、そして習近平国家主席の夕食会での反応がポジティブなものであった場合、事前にゼレンスキー大統領に対するお膳立てをしてもらった上で訪問に踏み切ることになるかもしれません。

ただ、欧州各国が中国の姿勢を評価し、仲裁努力を後押しするような事態が生まれた場合、確実に対ロシアの欧米諸国の結束は乱れることになり、それは見事に中ロの思うつぼとなるかもしれません。

そして中国が今、世界各地の困難な紛争の調停や仲裁に積極的に乗り出している“本当の”理由は、実はロシアとウクライナの戦争を終結させることではありません。

それは習近平政権が台湾併合を確実に進めるために、武力介入もオプションに入れた形で行動に移す際、可能な限り中国シンパを増やし、中国への風当たりを弱める狙いが見えてきます。

一説には「2027年には武力侵攻を実行できるような準備をしておくように」との指示が習近平国家主席から中国人民解放軍に下りていると言われていますが、実際に侵攻する可能性は低く、話し合いを通じた最適解の模索を中国は行い、台湾同胞の生命と財産も守るというイメージづくりの基礎を固めているのではないかと考えます。

そのプロセスを円滑に進めるための地ならしが、今、活発化させている外交努力と仲裁役というイメージづくりに繋がっていると思われ、少しずつ中国の宿願を叶えるために邪魔となる“雑音”(例えば、米議会下院議長と蔡英文総統との会談など)をmutingしようとしているように見えてきます。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 笑顔で日本を揺さぶる習近平。林外相に王毅政治局員がかけた「言葉」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け