岸田の苦戦は必至。二階を引っ張り出すも困難な日中関係「正常化」

 

日中双方で相手国への印象を最悪にした原因

それにしても、あらゆる世論調査が示す日本人の中国に対する嫌悪ないし憎悪の感情は度を超していて、二階や林がいくら頑張ったところでこれを克服して日中関係を正常な軌道に戻すのは容易なことではない。

昨年9月は、田中角栄・周恩来両首相による1972年の日中国交正常化の記念すべき時機を迎えたが、日本の民間シンクタンク「言論NGO」が2022年9月に行った「日中国交正常化50周年に関する世論調査」(★1)では、50周年を「知っているか」という問いに対し、「知っている」人は32.6%で、「知らない」人が67.1%と、ほぼ7割近くに達した。また、今の日中関係を「満足」だと感じている人はわずか6.1%で、「不満」が43.9%と4割を越えていた〔図表1〕。

★1:日中国交正常化を知らない、日中平和友好条約に懐疑的な見方が多数となるが、両国首脳の相互訪問には前向きな見方を示す

言論NPOでは、中国の機関と協力して2005年から毎年、日中双方の相手国に対する意識調査を行なっており、現在公表されているのは2021年までのデータである(★2)。

これを見ると、日本人が中国に対して「良い印象を持っている」のは2007年の33.1%がピークで、以後ほぼ一貫して下り続け、2014年にはどん底の6.8%を記録した。その後、少しは持ち直したものの、2021年は1桁台の9.0%である。

他方、中国人の日本に対して「良い印象を持っている」のは2010年の38.3%から2013年には5.2%まで暴落している。その後は急速に回復して2020年には45.9%の新ピークを達成したが、21年はまた下降気味となった〔図表2〕。

★2:中国国民の日本に対する意識が、この一年間で急激に悪化したことが明らかに

2013年から翌14年に日中双方で相手国への印象が最悪を記録するのは、言うまでもなく、野田佳彦政権による「尖閣諸島国有化」の影響である。21年に(日本側ではほぼ横ばいが続くが)中国側で対日印象が悪化する理由としても、日本人の歴史認識すなわち過去の対中侵略への謝罪が出来ていないこと、尖閣を国有化して対立を引き起こしたことが上位を占めていて、尖閣問題が両国関係において大きな障害となっていることが分かる。

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