2.武士が学んでいたことを学ぶ
武士道では、「文武両道」が重んじられました。江戸時代は身分社会であり、庶民と武士では全く異なる教育を受けていました。
庶民の教育は、「読み書きそろばん」といわれる読書・習字、算術が中心です。その他にも和学・漢学といった学問、裁縫のような「お稽古事」、さらには絵・華道・茶道・俳諧といった習い事なども教えられるようになったそうです。
職業教育を身につけるという意味で、帳簿記入・計算・手紙の書き方といった技能習得の面も重視され、「往来物」とよばれるそれぞれの職業に合わせた教科書を用いて学習がなされました。
実利的かつ機能的であり、お金の教育もしっかりと行っていました。庶民教育の方が資本主義的であり、この流れが現代の初頭教育につながっているようです。
一方、武士の教育は、幼い頃から、礼儀・言葉遣い・挨拶・食事の作法・苦しみに耐える訓練など、武士としての体面や家名を傷つけないようにと、厳格な家庭教育、しつけが課されました。ある意味で虐待に近い厳しさだったようです。
8~15歳になると藩校に通います。多くの藩が江戸中期の藩政改革期に開校し、一定の身分以上の武士が義務として通学させる藩もありました。
教育内容は、四書五経といった儒学経典などの素読が中心です。「読書百遍、意自ずから通ず」といわれ、内容が理解できなくとも記憶するまで徹底的に朗読させられました。さらに国学、歴史なども加えられ、習字や作文なども取り入れられました。算術は財政などにかかわる専門的な学問の性格をもっていました。
また、武士としての心構えについても厳格に教えられました。こうした教育が原理主義的な武士を形成したのだと思います。この部分は現代人にはあまり必要はないと思います。定年後の男性という前提に立てば、武士の教養科目ともいえる「書道」「茶の湯」「能(謡曲・仕舞)」等を学ぶのが良いのではないでしょうか。
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