定年後に何をしたらいいかわからない人に勧める「武士になる」選択

Portrait of samurai holding japanese sword
 

現代に伝わる武士の書状などを見ると、みな達筆です。江戸時代の武士は軍人から官僚へと仕事の中身が変わり、毎日、筆で文字を書いていたでしょう。

現代人においても、定年後は芳名帳などに署名する機会が増えるものです。なにより文字が上手い人はカッコイイ。書道といっても、書き初めのように太筆で大きな文字を書くのではなく、小筆で小さな文字を書くことが重要です。本格的に書道を習うのも良いのですが、時間がなければ筆ペン習字や写経に取り組んでみるのも良いかもしれません。

茶の湯を本格的に習うのはハードルが高いと思います。もし、周囲に茶道を習っている人がいるようでしたら、「定年になって、茶の湯に興味が出てきた。続くかどうか分からないけど、体験させてもらえますか」と頼んでみるのが良いでしょう。茶道を習っている人は圧倒的に女性が多いので、男性が茶道に興味を持つこと自体が喜ばれると思います。

もし、しがらみがない方が良いと考えるならば、裏千家「初心者のための茶道教室」はどうでしょうか。全国のホテル等を会場にして、半年のコースで全20回、約7万円で茶道の基本が習えます。服装も自由で良いので、気軽に習ってみると良いと思います(詳しくは、「茶道を習う」まで)。

能も初心者向けの教室があります。宝生流能楽堂(水道橋駅徒歩3分)で2年間、月3回の稽古、費用は入学金3,000円、月6,000円(謡曲か仕舞を選択、1万1,000円で両方)となっています(詳しくは、「初心者のための「謡曲・仕舞教室」のご案内」まで)。

3.お金儲けを副業と考える

「武士道」という倫理観では、忠義、勇気、礼儀、誠実、名誉などが重んじられていました。この倫理観の下では、お金儲けを目的とした行為は、武士の名誉や品位を損なうものとして忌避されました。

そうは言っても、武士たちも生活のためにお金を必要としていました。そのため、一部の武士は商売をしていましたし、報酬や年貢、禄高などの形で収入を得ていました。

但し、これらの収益活動は「副業」として行われていました。武士道を貫くことが本業だったのです。

現代人は金儲けが本業です。お金を稼ぐことが価値あることと考えています。そのために受験勉強を行い、良い大学、良い会社へと進むのです。ところが、定年になると、突然、本業を奪われます。金儲けの手段である仕事を奪われ、会社で培ってきた人間関係も奪われます。十分な退職金を受けとったとしても、日々の充実感を失ってしまう人は少なくありません。

そこで、定年を契機に、発想の転換をお勧めしたいと思います。

お金儲けは副業だった。我々の本業は、健全な社会を維持し、その秩序を保つことであるというのはいかがでしょうか。言い換えれば「社会貢献」ですが、正確には貢献ではありません。我々が社会を動かしている主体ですから、社会活動そのものであります。これは武士の本分と共通しています。

実は、会社の本業も金儲けではありません。会社は給料を払うことが目的ではありません。社会の中で会社という組織を維持し、様々な産業や職業を結びつけ、社会を発展させる活動こそが会社の目的です。会社の活動を継続するために利益が必要なのであり、利益のために会社があるのではありません。

出世とか昇給というのは、組織を維持するために社員の忠誠心とモチベーションを高めるための手段です。出世も昇給も副業の目的です。

定年になったら、副業から卒業して本業に取り組まなければなりません。お金儲けを目的とせず、より大きな目的を目指す人生が待っています。

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