武士も平和な時代になって、自身の存在意義について悩みました。平和な時代には武士など必要ないのではないか。しかし、武士が天下統一したからこそ、平和が訪れたのです。武士の仕事は平和を維持することであり、社会秩序を維持することであると考えることで自身のアイデンティティを保つことかできました。
そこで、武士道は「文武両道」となりました。
現代人も自身のアイデンティティを見いだすことに苦慮しています。定年後にやる気がなくなるというのは、会社員というアイデンティティを失ったからです。定年後には、新たなアイデンティティ、存在意義が必要です。
現代に生きる武士は政治にも経済にも口を出すべきです。会社員だから会社の仕事をしていればいい、というわけではありません。定年を迎えて、会社員を卒業して社会人になりました。だから、社会に対して主体的に関わっていくことが求められます。我々の仕事は社会の発展と秩序の維持です。それを本業と考え、具体的な計画を立てていきましょう。そして、計画を実現させ、よりよい社会をつくっていきましょう。
編集後記「締めの都々逸」
「昔も今も 日本の中にゃ 悩んで頑張る人がいる」
武士って相当に屈折していたと思うんですよ。よく江戸時代って260年も持ちましたよね。だって、平和になっているのに、腰に刀を差して歩いているんです。貨幣経済が発展しても、給料は米で、大名も商人から借金しなければ生きていけない。
「もう侍やめて商人になろうよ」と言ってもおかしくないし、もっと暴力的に金を奪うこともできたと思います。
それを毎日剣術の稽古をして、勉強して、真面目に生きてきた。260年ですよ。ドラマでは幕末の激動の時代が取り上げられますが、僕は、200年近い平和の中で鬱屈していた時代が凄いと思います。
それが現在に通じているのではないか、と。だから、侍のライフスタイルが参考になるのではないか、と考える次第です。(坂口昌章)
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