さまざまな議論を引き起こした、衆院山口4区の補選に出馬の有田芳生氏による「下関は統一教会の聖地」発言。識者は一連の騒動をどう見たのでしょうか。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さんが、有田氏の発言を「重要な注意喚起とみる」としてその理由を解説。そして有田氏の発言を「ヘイトスピーチ」とする声に対して、現役信者たちがどう感じているか、元信者の立場から推察しています。
統一教会の被害が生まれる可能性の高い場所。「下関は統一教会の聖地」発言が意味すること
山口4区補欠選挙に出馬した、有田芳生さんは残念ながら、当選となりませんでしたが、「この下関って統一教会の聖地なんです」との演説の言葉は、多くの人たちへの注意となる大事なメッセージになったと考えています。
そもそも、この言葉は文鮮明教祖が日本に初めて下関から入国した1941年4月1日を記念する「日臨節」の大会における講演で、教団トップである、方相逸大陸会長が「山口の下関は聖地と同等の場所です」と祝祷を捧げたところからきています。
すでに元信者の立場からヤフーコメントもしましたが、教団トップの言葉は、神様の言葉なので、絶対視しなければなりません。
「聖地と同等」と言われれば、文字通りに信者は下関を捉えます。
つまり、下関が教団トップによって「聖地」と位置づけされることで、他の地域に比べて教団の信者らがより力を入れて伝道やお金集めの活動をしてくる場所になります。
つまり、旧統一教会による被害が生まれる可能性が高い場所ということになります。
まして安倍元首相の地盤でもあるので、信者らは彼を「教団に多大な貢献をしてくれた人物」として英雄視しており、信者らの力の入れようは半端ではないものになると考えます。
長年、詐欺や悪質商法を見てきて、被害に遭わないためには、まず自分が狙われているかどうかを知ることが必要です。
その上で身を守るための術を考えなければなりません。特殊詐欺であれば、詐欺グループは取得した名簿をもとに一定の地域を狙い打ちして詐欺の電話をかけてきます。不審な電話のかかってきた地域を警察は警戒します。
ターゲットにされているという状況を知ることは、何より大事になります。
住民たちも知らない下関と統一教会の深い関係
日本の統一教会の礎を築いた西川勝氏も下関にゆかりがある。
私が「下関は聖地と同等」という言葉で、すぐに思いだすのは、日本の教会の礎をつくった、西川勝氏(崔奉春:脱会)という宣教師のことです。
彼は文鮮明教祖の命をうけて、1958年に韓国から日本へ密入国しますが、捕まります。その後、収容所に送られて、病気のために「下関」の療養所に入ったと聞いています。しかし彼は療養所から逃げ出しました。
その後、彼の布教活動により、松本道子(松本ママ)、久保木修己元統一教会会長など、早々たるメンバーが入信していき、今の日本の統一教会の礎が築かれました。
彼がいなければ、久保木修己氏もいないし、今の教団の信者らは存在しないわけです。もちろん、今の日本の教団がありえないといってもよいと思います。
そうした意味においても、西川氏が一時期「下関」に身を寄せていたことは信者にとって、教団の出発点となる思い入れのある土地と考えている人もいると思います。
おそらく下関に住む多くの方は、この地が教団にとって縁のある土地であることを知らなかったと思います。
教団の正体を隠した布教活動や、霊感商法、高額献金等の被害が起こりやすい土地柄になっているとの認識が大事だと考えます。
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「有田氏の発言はヘイト」の声に現役信者が賛同するはずがない理由