競馬の若手女性騎手たちが「騎乗停止」に。なぜJRA前代未聞の不祥事は起きたか

 

今村聖奈と角田大河は、外部や第三者との通話が規則違反だということは知っていたが、騎手同士の通話は許されるという「誤った解釈」をしていた、とのことですが、そもそも「持ち込み禁止」なのですから、こんな言い訳は通用しません。それに、今村聖奈はインターネットも閲覧していたのですから、完全にアウトです。

これまでにもJRAでは、2011年5月に大江原圭(おおえはら けい)、2013年7月に原田敬伍、2015年3月にクリストフ・ルメール、2016年10月に丸山元気が、それぞれ開催中の調整ルームにスマホを持ち込み、ツイッターなどを閲覧するなどしていたため、全員が30日間の騎乗停止処分を受けています。

特にルメールの場合は、必死で日本語を勉強して、試験問題がすべて日本語のJRAの騎手免許を外国人で初めて取得して、この開催がデビュー戦だったのです。それまで10年以上も短期免許でJRAのレースに出場して来て、日本の競馬の規則は十分に知っていたはずなのに、デビュー開催で調整ルームにスマホを持ち込み、自分のツイッターを更新してしまったのです。

ルメールはJRAのレースだけでなく、ドバイのG1「シーマクラシック」でワンアンドオンリーに騎乗する予定だったので、多くのファンがショックを受けました。結局、デムーロ兄弟の弟のクリスチャンが代わりに騎乗しましたが、3着に終わってしまいました。ルメールは2006年の「シーマクラシック」をハーツクライで勝っているので、もしもルメールが騎乗していたら…と、あたしもガッカリしたことを覚えています。

でも、この「30日間の騎乗停止」は、他の公営ギャンブルと比べると、極めて軽い処分なのです。たとえば競輪の場合は、トップレーサーだった手島慶介が2003年11月に携帯電話を管理施設内に持ち込んで使用したことで、1年間の斡旋(あっせん)停止処分を受けました。「斡旋停止」とは「レース出場の斡旋を停止する」ということ、つまり「出場停止」と同じことですが、最長が1年間なので、手島慶介は最も重い処分を受けたのです。それでも、1年間の処分が明けてから活躍しましたが、5年後の2009年、34歳の若さで自殺してしまいました。

ボートレースでは、福岡所属の平田忠則が、2004年1月に通信機能付き電子手帳をレース場に持ち込んだため、こちらも1年間の出場停止処分を受けました。競輪でもボートレースでも「1年間の出場停止」なのに、競馬では「30日間の出場停止」、ずいぶん違うと思いませんか?

また、これは少し内容が違いますが、昨年2月、最強ボートレーサーの峰竜太が、選手自身が主催するインターネット上のゲームイベントで、ボートレースの予想屋と接触したことが判明したため、4カ月間の出場停止処分を受けました。つまり、公営ギャンブルの選手がレース期間中に、インターネットにアクセスしたり外部の者と通話したりすることを禁止しているのは、こういうことなのです。

いくら「自分のツイッターを見ただけ」「騎手同士で通話しただけ」と言っても、その日のレースに出場する選手が、外部の者と連絡できる通信機器を控室などに持ち込むということは、不正行為を疑われても仕方ないことなのです。そのため、出場停止期間の長短はあっても、すべての公営ギャンブルで禁止されているのです。

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