対抗手段に出る習近平。G7の真裏で中国が開催する「もう一つのサミット」

 

欧米の分断だけではない中国「和平外交の真の目的」

今週末に広島で開催されるG7サミットでは中国による影響力の拡大と脅威を念頭にG7を挙げての対応が協議される予定ですが、どのような反応が欧州各国(仏独伊英)からなされ、どのような発言があるか、非常に注目です。

もし秦剛外相の訪欧で中国経済と欧州経済のパートナーシップの回復、そしてポスト・ウクライナの復興についてのコミットメントとシェアの分割が議論されていたとしたら、来週早々に行われる李特使の訪欧では中国の和平外交への理解とサポートが持ち出されることで、欧州の関心をさらに中国側に引き寄せることに寄与するでしょうし、国際情勢における中国への厳格な態度に対してヒビを生じさせることに繋がるかもしれません。

欧米諸国は、対ウクライナ・対中国、そして対ロシアにおいてすでに同床異夢の状態ではないかと思われますが、何とかG7サミットの時点ではその綻びを隠すことが出来るか注目です。

しかし、中国が展開する和平外交の真の目的は、単に欧米の分断だけではありません。

もう一つのさらに大規模な目的は【反米グローバル・サウスチームの結束】です。

インド、インドネシア・ブラジル、南アフリカそしてトルコなどが軸になっている通称グローバル・サウスの国々は、緩やかな結束形態を取りつつも、欧米による支配に抵抗し、独自の利益の追求のために協力するという形態をとっています。

グローバル・サウスの国々は、経済大国として君臨する中国とその影響力、そして急速に伸びていく中国の軍事力に対しても警戒感を強め、中国とも距離を置く姿勢を貫いていますが、習近平国家主席の第3期目が始まって以降展開される“和平外交”は、中国への警戒心を薄れさせるソフトパワー的な影響力を発揮しているようです。

特に世界を驚かせたイランとサウジアラビア王国との関係修復と和平のお膳立てを中国がやってのけたことは、グローバル・サウスの国々における中国への評価をポジティブに変え、その後もスーダン問題、ASEANが頭を抱えるミャンマー情勢の仲介、債務軽減のための債権者会議への積極的参加と債務国への“配慮”などを通じて、じわじわと中国への好感触がグローバル・サウスの国々に広がっていると言われています。

最近、見られる典型例が南アフリカによる和平へのコミットメントの表明です。先日、グティエレス国連事務総長に対して、南アフリカのラマポーザ大統領が表明した「ウクライナ情勢のアフリカ連合諸国による調停」の背後には、実は中国が控えていると言われています。

あまり報じられていませんが王毅政治委員や秦剛外相がアフリカ諸国を訪問した際に、アフリカ連合(African Union)による仲介に支持の意を伝え、中国による和平外交との協力を呼び掛けて合意しています。

今回の提案では、南アフリカの他に、ザンビア、セネガル、コンゴ民主共和国、ウガンダ、そしてエジプトが共同で調停に乗り出すことが謳われていますが、これらの国々の特徴は、実はロシアとも長きにわたり友好関係を持ち、かつ中国とも経済的なパートナーシップ協定がある国々です。

南アフリカがロシアに武器弾薬を提供したらしいという嫌疑が欧米諸国から寄せられ、南アフリカが非難のやり玉に挙げられた際にも、国連の場で南アフリカを助け出したのは中国でしたし、別の案件では、エチオピアにおけるティグレイ紛争の調停にAUが乗り出すと表明した際にも、中国はそれを支持する旨を表明していることで、アフリカ諸国に恩を売っていると思われます。

そして最近のスーダン情勢へのコミットメントは、地域の安定が崩れることを懸念する東アフリカ諸国の支持を得るきっかけになり、アフリカ54か国とイラン・サウジアラビア王国に挟まれる中東諸国が次々と中国(とロシア)に近づいてきています。

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