中国がG7広島サミットの裏で講じた対抗手段
このことにより、欧米諸国とその仲間たちのブロックと、中ロブロック、そしてグローバル・サウスの国々という3つの極にわたる分断の絵図が、バランス面で少しずつ変わってきています。
中ロに対する警戒心は保ちつつも、グローバル・サウスの国々はじわりじわりと中ロブロックに引き寄せられているように見えます。
インド・インドネシアに代表される“アジア”のグローバル・サウスの国々については、最も対中警戒心が強いと言えますが、同時に欧米に対するネガティブイメージも強く、もしかしたらアジアは一つのブロックと言えるかもしれませんが、そのアジアもじわりじわりと中ロが主催する国家資本主義圏に寄ってきているように見えています。
実は広島でのG7サミットと並行して、中国も西安でカザフスタンやタジキスタン、ウズベキスタンなどの中央アジア・コーカサス諸国を集めた“サミット”を開催し、その議長を習近平国家主席が務めるという“対抗手段”に打って出ています。
そこでどのような問題が討議されるのかは分かりませんが、強まる中国包囲網に対抗するためのブロックづくりに加え、中央アジア諸国で強まる“次はわが国がロシアのターゲットになるのではないか”という対ロ警戒心を、中国が後ろ盾となることで軽減させ、一気に中ロの経済圏に引き入れようとの思惑が見えてきます。
スタン系と私が勝手に名付ける中央アジア諸国の地政学的な重要性は、アメリカ政府も十分に理解しており、ブリンケン国務長官も訪問してアメリカ政府のサポートと後ろ盾を約束してはいますが、どちらかというと、価値観の押し付けと正義の押し付けを行ってきたアメリカ外交への不信から、あまり関係の改善には寄与していないようです。
そのアメリカのバイデン大統領が広島にいる間に、中国は一気に中央アジア諸国の支持を固めようという思惑が見えてくるように思います。
今回のG7広島サミットでは、中国を念頭とした脅威への対抗やグローバル・サウスの国々との関係改善も主要議題とされ、アフリカ連合の議長国のコモロ、Pacific Island Forumの議長国クック諸島、G20の議長国インド、ASEANの議長国インドネシア、ベトナム、そしてブラジルも招待されますが(クワッドとの関係でオーストラリアも招待国)、G7諸国がどこまでこれらの“グローバル・サウス”の国々の関心と支持をboostできるかは疑問です。
実は議長国でもある日本はその成否を左右するカギを握る存在なのですが、今の外交姿勢でその仲介役を務められるかどうかは未知数です。
もしかしたらその答えこそが、今回のサミットの成功を占う要素なのかもしれません。
しかし、まあ、あの李輝大使をロシア・ウクライナ戦争における和平外交に起用してくるとは…。中国はやはり侮れません。
以上、国際情勢の裏側でした。
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