また中ロとの関係を崩したくないという動機も働いたはずで、余計な紛争に巻き込まれたくないという動機もあったはずだ。よほど大きな経済的メリットか政権維持の動機と絡まなければグローバル・サウスの国々の取り込みなど簡単ではないのだ。しかも、その経済的なメリットも中国に一日の長がある。
70年代初めの国連資源特別総会でトウ的な海と陸の道で世界を結ぶ「一帯一路」は、中欧貿易に目が奪われがちだが、実際のところ対途上国では主に交通インフラの建設やエネルギー産業に投資し経済発展の基盤を作る「中国版発展モデルの輸出」でもある。
G7と同時期に中国で行われていた第1回中国・中央アジアサミット(以下、中央アジアサミット=陝西省西安市)の報道の中で、中国と中央アジアの貿易が対前年比で22%増加したことが強調されていたが、これは中国とヨーロッパを結ぶ鉄道の約80%が中央アジアを通過することと無縁ではない。
こうした人々が実感している発展の手応えを、先進国がにわか援助で覆そうとしても簡単ではないのだ。現状、先進国が中国の対グローバル・サウスの影響力を削ぐ方法は、その問題点を指摘するしかなく、キーワードは「債務の罠」だ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年5月28日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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