全国で多発する「マイナンバーカード」をめぐるトラブル。これを受けて岸田首相は、河野太郎デジタル相に対して「データやシステムの再点検を行うよう」指示しました。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さんは、「ヒューマンエラーを0にすることはできない」ことを前提に、過去に“人”がきっかけで起きたあわや一大事となった事例を紹介。マイナンバーカードをめぐる政府の対策は「AIを過信し過ぎでは?」としています。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
「マイナンバーカード」をめぐるトラブルが全国で多発。人為的ミスか自己責任か?
「マイナンバーカード」をめぐるトラブルが、全国で多発していま
一体化した健康保険証に他人の情報が登録されたり、国からの給付
いずれのトラブルも「人為的なミス=ヒューマンエラー」とのこと
一方で、どんな優秀なシステムでも、そこに「人」がいる限りヒュ
2011年9月、那覇発羽田行き全日空140便が、浜松市の南方
原因はヒューマンエラーです。
トイレから戻ってきた機長(当時64)のために、副操縦士(当時
あと10秒落下し続けたら、飛行機は空中分解した可能性もあった
重大な事故の7割から8割はヒューマンエラーによるもので、1つ
いわゆる「ハインリッヒの法則」です。
この法則を導き出したハーバート・ウィリアム・ハインリッヒによ
100%ではなく98%。この2%こそが、そこに「人」がいる限
一方で、「人」は環境で変わる動物であり、ヒューマンエラーも例
・残業の多い現場で十分に休みが取れていない
・時間的切迫度が高い
・息の抜けない作業が多い
・チーム内で互いに助け合う関係性を持てない
・トップやリーダーの安全に対する認識が低い
といった仕事の特性や組織風土がミスを誘発してしまいます。
ヒューマンエラーは必ずしも個人の資質の問題ではないのです。
例えば2005年、関西国際空港で閉鎖中の誘導路に、外国航空会
事前に、各航空会社に閉鎖中の誘導路の情報を流し、航空管制塔で
ところがその後、さらに2件の誤進入が発生します。
「閉鎖中の誘導路があることは分かっていたが、標識がなかったの
「これで大丈夫だろう」──。誰もがそう信じたそうです。
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